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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章
お風呂上りでも仄かに香り立つ、兄自身の香り。
それを確かめるように細く高い鼻を擦り付けていると、匠海に強引に引き剥がされた。
ベッドのスプリングに落ちてぼふんと跳ねた妹に、匠海がその顔のすぐ脇に両肘を突き、ヴィヴィの視界いっぱいに兄だけが映し出される。
「ほら、ヴィクトリアっ お前の可愛い顔を見せろ」
どすの利いた声でそう命令してくる匠海に、興奮して息が乱れていたヴィヴィが、少し苦しそうに兄を見つめる。
しかし、興奮状態から少しずつ冷静になり始めていたヴィヴィは、心の中でふと疑問の声を上げた。
(うん……? 可愛い、顔……?)
「いいか? その大きな綺麗な瞳で、俺のことだけをずっと見つめてろっ」
(……ん……? お兄ちゃん……?)
何故か今さらそんな事を命令してくる兄に、ヴィヴィは内心首を傾げたが、なんだか匠海が少し可愛くも思えた。
「ん、見てる……っ ヴィヴィは、ずっと、お兄ちゃんだけ、見てるよ」
(わざわざ、言われなくっても……。ヴィヴィは物心付く前から、お兄ちゃんしか見てないってば~)
心の中でそう付け加えたヴィヴィは、ふわりと微笑み、目の前の兄の顔を細い掌で包み込んだ。
「―――っ ああ、もう、本当に……っ Shitっ!」
従順に兄に従ったヴィヴィに何故か苛立った様子でそう発した匠海は、少し乱暴に妹の膣から己の昂ぶりを抜き取った。
「あんっ ……っ!?」
兄の一連の言動が意味不明なヴィヴィは、訳が分からずぼかんと下から匠海を見上げる。
「……お兄、ちゃん?」
そしてがっくりと項垂れた匠海は、何故かヴィヴィのシャツに包まれた乳房に顔を埋めてきた。
「ああ、もうお前、どんだけ可愛いんだ……っ、はぁ、もう、可愛すぎる……っ どうしてくれよう……」
自分の貧相な膨らみに、その端正な顔を擦り付けてくる兄。
そしてその兄の形のいい唇から洩れるのは、自分を「可愛いい」と嘆く意味不明の言葉。
(……なんの、こっちゃい……)
ヴィヴィは本当に意味が分からなくて、途方に暮れながらも、取りあえず兄の頭をよしよしと撫で始めた。
それが気に入ったのか、更にすりすりと頬を寄せてくる匠海に、ヴィヴィは両手でその黒髪を優しく包み込んだ。