この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第89章
「…………??」
『鞭』を与えていた筈の兄が、自分の名前を愛おしそうに何度も呼び、悔しそうに「可愛いい」なんて言ってきて。
そして、今はまるで甘えるように自分の胸に顔を埋めている。
何で一体こんな事に――?
そこではっと気づいたヴィヴィは、文字通りどん引きした。
(お、お兄ちゃん……っ
ど、どんだけ、 “制服好き” なの……っ!?)
ヴィヴィは大きな瞳を、更に大きく見開いて絶句する。
ようやくこれで合点がいった。
匠海が自分に『鞭』を与えられない理由――それは、ヴィヴィが“制服のコスプレ”をしているから。
(う……、う~わ~……、さ、さすが……“エロ変態絶倫ロリ王子”……っ)
「………………っ」
ヴィヴィは困ったように左右に視線を巡らせていたが、やがてその瞳を細めた。
(ま、いっか……。だってお兄ちゃん……、今迄が完璧すぎたんだもの……)
ヴィヴィが今迄見てきた匠海という人間は、本当に完璧人間だった。
顔良し、頭良し、スタイル良し、器量良し、運動神経良し。
優しくて、頼りがいがあって、カリスマ性があって、面倒見もよく、女にも男にもモテるいい男。
将来もこの篠宮の代表となるのだからお金持ちになるのだし、もしそうならなくてもきっと社会的に成功する男。
そんな完全無欠の完璧人間に、性的に完璧じゃないところがあったとしても、いいじゃないか。
今のところは、犯罪に触れるようなことはやっていないようだし。
「……ふっ ……うふふっ」
突然笑い出したヴィヴィに、その胸に突っ伏していた匠海が、ぴくりと動く。
「……なんだっ」
押し殺した声でそう訊いてくる匠海に、ヴィヴィはもう可笑しくて笑いが止まらなかった。
「ふふ……、あはははっ」
胸を喘がせて笑うヴィヴィに、そこから顔を上げた兄が、睨みながら自分を見下ろしてくる。
「なんだよ……っ」
「ん~? 可愛いなあって、思って♡」
そう屈託なく笑ったヴィヴィに、匠海は「な……っ!?」と絶句した。
「“甘えん坊” なお兄ちゃんも、ヴィヴィ、好きだよ?」
ヴィヴィはそう本心を言ったのに、匠海は苦虫を噛み潰した様な表情で自分の上から離れていこうとする。