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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第18章                   

 左頬に添えていた右手を空いた左腕とを一緒に斜め上に伸ばし、両肩で肩甲骨を閉じるように後ろへと引き寄せながらイナバウアーへと入る。

 柔軟性を生かして背中を極限までそらしベリーダンスで培ったチェストサークルの動きを取り入れると、体勢を戻してトリプルアクセルに入るのだ。

 ヴィヴィはその後も存分にベリーダンスの動きを取り入れると、何とかFSの2/3を作り終えてその日を終えた。








 翌日もヴィヴィは通常のレッスンを終えると、一旦屋敷へと帰る為にストレッチを始めた。

 隣で同じくストレッチをしていたクリスが、ぼそりと呟く。

「どう? 順調?」

「ん~……まだ半分くらい。振付舐めてた……。難しすぎる」

 正直にそうぼやいたヴィヴィの耳元でクリスが囁く。

「僕と一緒に帰ったことにして、この後守衛室に隠れてなよ。屋敷での出迎えは朝比奈だけだし、コーチ達が帰った後に振付したら? 終わる頃に朝比奈を迎えによこすから」

 「そのほうが少しは早く帰ってこれるでしょ?」とクリスが続けたのを聞いて、ヴィヴィは兄を見つめなおした。

 確かにヴィヴィが屋敷にいつも通り戻ったかどうかを確認しているのは、双子の執事の朝比奈だけだ。

 ジュリアンは自分のスポーツカーをいつも運転しているので、ヴィヴィ達の送迎車に乗ることはない。

「でも、運転手は私が帰ってないってダッド達に報告するんじゃない……?」

 クリスの提案してくれた方法だと時間が有効に使えるし何よりも睡眠時間を少しでも多く取れるのだが、ヴィヴィは朝比奈以外の使用人には協力を求めていなかった。

「大丈夫。僕が運転手と、あと守衛さんに言っておいたから」

「クリス……」

 驚いてクリスを見つめるとと、その瞳には心配そうな色が浮かんでいた。

「これぐらいしかしてあげられないけれど……頑張って」

「………………っ」

 クリスの温かい言葉に、ヴィヴィは胸をつまらせた。

 腕を伸ばして隣のクリスに抱きつくと、兄は優しく背中を撫でてくれた。

 振付が思い通りにいかなくて弱気になってきていたヴィヴィは、クリスからの激励でまたやる気を取り戻した。けれど――、

「っていうか、早く帰ってきて少しでもいいから長く寝て……。ヴィヴィの可愛い顔にどんどんクマが浮かび上がってくるの、見るに堪えない……」

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