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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第90章
ヴィヴィはウォークインクローゼットに入ると、電気を点ける。
そしてその奥、棚の一角に2体の縫いぐるみが飾られていることに気付いた。
「いた……。こんな暗いところにいたら、寂しいよね?」
そう話し掛けたヴィヴィは、2匹を連れてベッドルームへと戻った。
制服を脱いで部屋の隅に置かれた一人掛けソファーに置くと、ヴィヴィは素っ裸でベッドの中に潜り込んだ。
しばらくすると匠海が戻って来た。
腰から下にバスタオルを巻いていたので、シャワーを軽く浴びたのであろう。
大体の場合、性行為は男性のほうが運動量も多く、また体温も高いために汗をかくらしい。
暖かな濡れタオルでヴィヴィを綺麗にしてくれた匠海は、本当に宣言通りヴィヴィを抱いて寝転がった。
「はい。お兄ちゃんにはヴィヴィのウサギさんで、ヴィヴィはクリスのクマさん」
互いの肌と肌が密着しあう間にその2匹を潜り込ませたヴィヴィに、匠海がうんざりした顔をする。
「……暑いんだけど」
匠海のその突っ込みに、ヴィヴィは何故か半眼になり、唸るように唱えた。
「心頭滅却すれば火もまた涼し――」
「使い方間違ってんだよっ」
そう突っ込んだ兄に、ヴィヴィはにっこりと笑い掛ける。
「うふふ。お兄ちゃん?」
「なんだっ」
「だぁいすきっ」
「……――っ!? 五月蠅い、さっさと寝ろっ」
何故か言葉を詰まらせた匠海を不思議に思いながらも、ヴィヴィは目蓋を瞑ろうとし思い出す。
「はあい……。あ……」
「なんだ……。まだ何かあるのか……?」
そうげんなりしてみせる匠海に、ヴィヴィは唇を寄せた。
ちゅ。
可愛らしいリップ音が、静かな寝室に鳴る。
「おやすみなさいのちゅー。うふふ」
「とっとと寝ろっ!」
そう喚いた匠海に、ヴィヴィはぎゅうとしがみ付き「うんっ」と嬉しそうに頷いたのだった。
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※ 心頭滅却すれば火もまた涼し : どんな苦痛であっても、心の持ち方次第でしのげるという教え。