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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第90章
『ヴィクトリア……。お前、また俺を信じてなかっただろう……?』
「………………っ」
『馬鹿……。信じろよ。っていうか、命令だ――俺を信じなさい。ヴィクトリア以外の女に興味はない』
匠海のその言葉に、ヴィヴィは視線を左右にさ迷わせ――そして、しぶしぶ頷いた。
「……はい……」
『ああ、全然信じてないな……』
少し悲しそうにも聞こえた匠海の声を無視し、ヴィヴィは続ける。
「……お兄ちゃん、今日、帰ってこないの……?」
『う~ん、後、2時間後くらいには、そっちに着けるかと』
電話の向こうで、椅子の背凭れがたわむ様なきしりという小さな音がしたのを、ヴィヴィは聞き逃さなかった。
「……ヴィヴィ、お兄ちゃんのベッドで寝てて、いい……?」
『いいよ。なんならひとりエッチしてる声、聴かせてくれない?』
「……――っ!? し、しないもんっ」
兄の悪戯っぽい声音に絶句したヴィヴィは、咄嗟に反論する。
『したことあるくせに。しかも俺のベッドの上で』
「――っ!! あ、あの1回だけだもんっ」
(だってあれは、お兄ちゃんがっ! 「毎日抱く」って言ったのに帰ってこなくて……っ)
年始、匠海を彼のベッドの中で待っていたヴィヴィは、『鞭』を与えらえ始めたせいで少しおかしくなっていて、自分で火照った躰を慰めてしまった。
そしてあろうことか、汚れた指を黒いシーツに擦り付け、自慰の後を刻み付けていたのだ。
『やっぱり、したんだ』
ふっという嗤い声と共に返された兄の返事に、馬鹿な返事をしてしまった自分に気づいたヴィヴィは、匠海に八つ当たりした。
「――っっっ!? お、お兄ちゃんの、バカぁっ!!!」
『ふ……。じゃあいい。今度俺の事を信じられなかったら、俺の目の前でひとりエッチさせてやる』
「ええ……っ!?」
(なんでそうなるのっ!?)
『簡単なことじゃないか。要は俺を信じてさえいれば、そんな恥ずかしいこともさせられない』
楽しそうな兄の声に、ヴィヴィは口ごもる。
(な、なんだか、無茶苦茶な言い分な気がするけど……)
「う、うん……。お兄ちゃん……」
『なんだ?』
「……だいすき……。早く、帰ってきてね……?」
自分でも思った以上に、甘えた声が出てしまった。