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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第90章
「ん? なあに?」
「ええ。お二人とも、よくこの睡眠時間で過ごされているなと思いまして」
「あ、うん……。そうだね」
朝比奈が言う“この睡眠時間”というのは、双子の信じられない睡眠時間の短さだった。
朝は5時に起床、夜は12時過ぎに就寝――睡眠時間は5時間もない。
シーズンオフになると、睡眠時間は6時間になったりもするが、1年の半分以上は5時間睡眠だ。
「クリスは特に、睡眠=趣味だから、しんどいかも」
ヴィヴィが心配そうにそう呟けば、朝比奈も頷く。
「お2人とも、それで無くとも分刻みのスケジュールを、アスリートとしても受験生としても熟されておりますのに。本当にこの朝比奈、心から尊敬致します」
そう結んだ朝比奈に誇らしげに見つめられれば、ヴィヴィも照れる。
「あはは。大げさな~」
(多分ヴィヴィ、3時間睡眠で生きてける人なんだと思うだよね~。実際は今4時間半位しか寝てないし。でもクマにならないし、ちゃんと翌朝には身体は復活してるし……。まあ、脳みそや精神の安静の為には、本当はもう少し眠ったほうがいいのかもしれないけれど……)
そう心の中で思いながらハーブの缶やパックを見て、今日の物を選んでいると、コンコンと扉のノック音が聞こえた。
「はい。お待ち下さいませ」
朝比奈がそう折り目正しい返事と共に近付いて行ったのは、匠海とヴィヴィの部屋を繋ぐ大きな扉。
(あれ、お兄ちゃん、今日は早いな……?)
ヴィヴィが白石のマントルピースの上の置時計を確認すると、まだ11:45だった。
いつもはヴィヴィが寝室に下がる12時過ぎに、兄が来ることが多いのだが。
朝比奈が開けた扉の先にいたのは、匠海の執事・五十嵐だった。
「失礼致します。匠海様が、お嬢様に晩酌にお付き合い頂きたいとの事です」
「あ、分かった~」
ヴィヴィは直接五十嵐に返事をすると、1つのハーブの缶を選んだ。
「朝比奈。ハーブティーはお兄ちゃんのお部屋で飲むね~?」
「畏まりました」
朝比奈が匠海の部屋にハーブティーのセットを運び込むのに続き、ヴィヴィは兄のリビングに入った。