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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第91章               

「後はカレン、本番までに顔真っ赤になるの、何とかしておいて?」

 ヴィヴィは、熟したトマトの様なカレンに、そう釘を刺すのを忘れなかった。

「む、む~り~……っ」

 泣きそうな声でそう唸るカレンに、ヴィヴィは「カレン、可愛いな~」と心の中で思い、にんまりした。








「つ、疲れた……」

 ヴィヴィのそのぼやきが、広い私室のリビングに響く。

 今日一日の予定を終え、後は就寝準備だけとなった今、ヴィヴィはエプソム・ソルトの足湯に浸かりながら、ぐったりと白皮のソファーの背凭れに上半身を預けていた。
 
 思い出してみれば昨夜の睡眠時間は約3時間。
 
 それで分刻みのスケジュールで頭も身体もフル稼働なのだから、疲れないほうがおかしい。

(もう……、お兄ちゃん、しつこいんだもんっ)

 ヴィヴィは目蓋を閉じたまま、ぷうと白い頬を膨らます。

(ダメって言っても聞いてくれないし、えっちな事……ううん、それを通り越して、へ、変態みたいなことばっかり言うし、しちゃうし……っ)

 頭の中でそう不平不満を漏らしたヴィヴィは、膨らませていた頬の中の空気を「ふへぇ~」と吐き出す。

 そして背凭れに乗せていた金色の頭を、兄の部屋の方へと巡らせ目蓋を上げた。

「……まだ帰って、ないのかな……」

 篠宮邸の壁や床は厚くて防音気密性に優れてはいるが、それでもやはり隣の部屋に人がいるかどうかという気配は、不思議と分かるものだ。

(お兄ちゃん、今日、会社で居眠りしなかったかな……?)

 そう匠海の事を心配していると、クリスの部屋へと通じる扉から朝比奈が入ってきた。

「お嬢様、もう10分になりますよ?」

 エプソム・ソルトは効果が強いので、10分程で使用を止めるように。

 そう決められているヴィヴィは、「はあい」と返事をすると足を拭き、お風呂に入るためにバスルームへと消えて行った。






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