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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第91章
日付が変わる頃。
すでにベッドの中でウトウトしていたヴィヴィは、暗闇の中に紛れ込んだ人物に気付いたが、寝たふりを決め込んだ。
「ヴィクトリア……」
そう甘く掠れた声で囁きながら、許可もなくキングサイズのベッドに登ってくるのは勿論、兄の匠海。
「………………」
「ん……? 寝たのか?」
真上を向いて目蓋を瞑ったままのヴィヴィに、その隣に身を横たえた匠海が、なんだか楽しそうに覗き込んでいるのが気配だけでも伝わってくる。
「可愛い寝顔だな……。襲いたくなってきた。寝てるし、いいよな?」
「――っっ!? よくないっ!!」
小声でそう喚いたヴィヴィが、ばちりと目蓋を開けると、目の前には匠海の整った顔があった。
それはヴィヴィの鼻の先に触れそうなほど近づくと、にやりと悪そうな笑みを浮かべる。
「ふ。起きてた」
匠海のその意地悪な言葉に、ヴィヴィは眼を剥いた。
「……――っ!? ヴィヴィ、絶交中なのっ! 無視してるのっ」
そう子供っぽく反抗したヴィヴィは、頬を膨らませて匠海に背を向けた。
「あははっ」
後ろから聞こえてくる兄の笑い声にさらにむっとしたヴィヴィは、「ふんっ」と鼻息荒く反発する。
(お兄ちゃんもたまには、困ればいいんだっ ふんだっ)
まるでヴィヴィのその心の声が届いたかのように、匠海は背を向け続ける妹をその胸の中に抱き寄せてきた。
途端に濃厚になる兄の香りに、ヴィヴィの薄い胸がきゅうと締め付けられる。
先程ちらりと見た匠海は、スーツを纏っていた。
またこんなに遅くまで仕事だったんだ……と、ヴィヴィはむくれながらも、やはり心配にもなった。
「ヴィクトリア、ごめん。許して……」
耳元でそう優しく囁かれ、ヴィヴィの華奢な躰が匠海の腕の中でぴくりと震える。
「え……?」
そう小さく驚きの声を上げたヴィヴィに、匠海はその耳たぶにかぷりと噛み付き、ぺろりとその中で舐めあげた。
兄のざらついた舌が耳のふちを辿るその濡れた感触に、ヴィヴィの中をぞくぞくと甘い痺れがさざ波の様に這い上がっていく。
「あっ やぁん……っ」
兄に舐められると嫌でも躰が喜びに打ち震えてしまう。
唇からは我慢していても、まるで「もっと」と強請っているような声がでてしまう。