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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第91章               

 だって仕方ないではないか。

 自分は心から匠海を愛している――だから気持ちよくなっちゃうのは、しょうがない。

「ほら、昨日は、お前が凄く感じる日だっただろう? 気持ち良さそうに乱れるヴィクトリアがもう可愛すぎて。あんなの見せられたら、男なら誰だってしつこくしちゃうって」

「………………」

 そう、ヴィヴィは兄を男として心から愛している。

 だが、最愛の兄でも“こんなふう”に言われると、さすがのヴィヴィも我慢ならない。

「……ヴィヴィのせいだってぇ~~?」

 唸り声に近い低い声でそう言い返すヴィヴィに、匠海が苦笑する。

「それもあるけれど……。う~ん、独占欲?」

「……え……?」

 匠海の意外な言葉に、ヴィヴィはその腕の中で瞳をぱちくりとさせた。

(独占欲……?)

「ヴィクトリアは俺のだぞ~ってな。お前の心にも躰にも、沢山刻み付けたかった」

 そううっとりと囁いて妹を後ろからぎゅうと抱き締め直す匠海に、ヴィヴィは眉をハの字にしてぼそりと呟いた。

「……ずるい……」

 ヴィヴィはゆっくりと匠海の腕に両手を添える。

(本当に、ずるい……。っていうか、それって、ヴィヴィのこと、信じてないんじゃない……? 他の男ともそういう事しそうだから――みたいな……)

「ふ……。確かに、俺はずるいかもな」

 妹の言い分をそう素直に認めた匠海に、ヴィヴィは少しの驚きと共に複雑な心境になった。

「……う、ん……」

(そうだよ。お兄ちゃんはずるいんだよ……。だってヴィヴィのことは独占したがるくせに、ヴィヴィにはお兄ちゃんを独占させてはくれないんだから……)

「はは。じゃあ、おやすみ」

 そう言って最後にぎゅうとヴィヴィを背後から抱きしめた匠海は、抱擁を解きベッドから降りて去って行く。

 その後ろ姿を振り返ったヴィヴィが、匠海を呼び止めた。

「…………おにい、ちゃん」

「ん……、なんだ?」

「……忘れ物……」

「え? なに?」

 ベッドの中で弱々しく呟くヴィヴィに、兄がその傍まで戻りながら尋ねてくる。

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