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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第91章
「ヴィヴィ……、大丈夫か……?」
すぐ近くにいたアレックスが、心配げな表情でヴィヴィを見つめていた。
「あ、うん。なんでもないの~。ヴィヴィ、苺ミルク買ってくる~」
そう明るく言ってパタパタという足音と共に教室から出たヴィヴィは、しばらく歩くとはぁと大きく息を吐き、廊下で立ち止まった。
「………………っ」
(……なに……して……。何、言ってるんだろ……。ヴィヴィの、馬鹿……っ)
そう自己嫌悪に陥りながら、手でくしゃりとこめかみ辺りの髪を掴んだ時、もう片方の手を後ろから誰かに握られた。
ゆっくりと振り返った先に立っていたのは、案の定、双子の兄。
「……クリス……」
「僕も……苺ミルク……」
しょぼくれた妹を見下ろしながらそう呟いたクリスは、掴んだ手を引きながらカフェテリアへと向かって歩み始めた。
しょうがなく歩みを始めたヴィヴィに、クリスが静かな声で話しかけてくる。
「ヴィヴィは、とっても可愛いよ……」
「……お人形さん……みたい……?」
俯きながらそう呟いたヴィヴィに、クリスはすぐに否定してきた。
「ううん……。僕とそっくりな大きな瞳は“目は口ほどに物を言う”っていう言葉がピッタリなほど、感情が明け透けで嘘を吐けないし……」
そこで言葉を区切ったクリスは歩を止め、繋いでいないほうの掌でヴィヴィの頬を包み込んだ。
「ヴィヴィの可憐な唇は、直ぐ尖ったり、ほっぺを膨らましたと思ったら、ケタケタ笑ったり……。全然、人形なんかじゃ無いから……」
「……うん……」
妹の為を思ってくれるクリスの誠実な言葉は、ヴィヴィの鼓膜を震わせても、心までは届かなかった。
ただ、頬を包んでくれる暖かな掌には、「大丈夫だよ」と言われている様な説得力があった。
「カレンに、謝ろう……? あれは褒め言葉であって、貶してるわけじゃないよ……?」
膝を折って自分を覗き込んでくるクリスに、ヴィヴィは視線を合わせてこくりと頷いた。
「うん……、分かってる……。クリス、ありがとね……?」
ヴィヴィがそうお礼を言うと、クリスはその頭を優しく撫でてくれた。
(本当はちゃんと分かってる……。大丈夫……。ただ、馬鹿みたいに反応しちゃっただけ……)