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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第91章               

 カフェテリアに連れて来られ、苺ミルクを2つ注文し。

 そしてクリスに導かれてカフェテリアの隅――中庭が目の前に広がる席へと連れて行かれた。

 椅子に腰かけた途端に予鈴が鳴ったが、クリスは中庭を見ながら苺ミルクを飲んでいたので、ヴィヴィもそれにならった。

 冷凍苺の爽やかな酸味と、少量の蜂蜜の甘さが口内に広がる、そのいつもと変わらぬ美味しさに、ヴィヴィの心が少し落ち着いた。

 ぼうと秋の気配が色濃い中庭を見るともなしに見ていると、クリスがヴィヴィの細い肩に金色の頭を乗せてきた。

 その甘えた仕草が可愛くて、ヴィヴィはふっと口元を緩めると、ちゅっとさらさらの髪にキスを落とす。

 そのまま柔らかな髪を撫でながらも、ヴィヴィの思考は違うところにあった。

 留学から帰国した兄は、見違えるほどに優しくなった。

 いや、ヴィヴィが過ちを犯す前の普段の兄に戻った、と言ったほうが正しいかもしれない。

 優しくて、家族思いで、周りをよく見ていて、でも意地悪――そんな兄に。

 確かに『鞭』の時の言葉使いは悪いし、高圧的なところは前のままだが、ヴィヴィが制服を着ることによって、以前のように酷い扱いを受けることもなかった。

 そう、以前の様に――。

 ヴィヴィの薄い唇が、きゅっと白い歯で噛み締められる。

 年末年始。

 帰国した匠海に与えられた『鞭』を、ヴィヴィは決して忘れてはいない。

 忘れられる筈もない。

 汚い言葉で貶められ、侮辱され、人間性まで否定され。

 そして兄は受け入れる準備が整っていない自分の躰を、無理やり抱いた。

 妹が後ろから貫かれるのが嫌いと解っていて、あえて後ろからしか抱かない徹底ぶりで。

 「中には出さないで」と初めて妹が拒否した日にも、無視して膣内で吐精した兄。

 散々抱き尽くして意識を失った自分を、まるで使い古した人形の様に捨て置き、放置し――。

 一連の結果、ヴィヴィは、『鞭』の時は心のない、何も感じない“人形”にならないと耐えられないと、自分を殺していた。

 ただそのせいで、第三者に“お人形さん”の様に可愛い等と褒められるだけでも、嫌悪感を覚えるようになってしまったが。

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