この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第91章               

「………………」

 ヴィヴィの灰色の瞳に浮かぶのは、諦めと失望と、紛れもない寂しさの色。

(全部、自分が蒔いた種って、分かってるんだけど……)

 それでも悲しくなる。

 腹立たしくなる。

 “人形”と揶揄される言葉を聞くと、耐えられなくなる。

 それはきっと、ヴィヴィの心の奥底に「兄にそう思われているのでは?」という恐怖が、根深く残っているからに他ならない。

 本鈴の音に気付き、肩の上のクリスを見下ろすと、ぼ~っとしている様で動く気配はなかった。

 ヴィヴィもなんだか教室へ戻る気分にもなれず、ただずっと目の前に広がる景色を眺めていた。









 その日の夜、12時を回った頃。

 ヴィヴィは兄の寝室で匠海と対峙していた。

 妹が前回に引き続き制服を身に纏っている事に、悔しそうな表情を浮かべている兄。

 そして、勝ち誇った表情を浮かべている妹。

 「狡い」とは罵られるものの、「脱げ」とは言わない兄に、ヴィヴィはにっこりと微笑んでその傍へと寄った。

「だってね、ヴィヴィは、お兄ちゃんの“生徒”でしょう?」

 そう囁きながらベッドの傍に立ち尽くした匠海を、ヴィヴィは見上げる。

「は? 生徒?」

 訳が分からないといった表情を浮かべる兄に、ヴィヴィは艶々の唇を尖らせる。

「お兄ちゃんが、言ったんだよ? 『良い事も悪い事も、全て俺が教えてやるよ』って」

 それはクリスマスに帰国した兄に、大人になったらお酒の飲み方を教えて欲しい、と強請った自分へと返された言葉。

「……っ くそっ 揚げ足取りやがって……っ」

「……怒っちゃ、やっ」

 自分の言動を思い出したのか悔しそうに舌打ちした匠海に、ヴィヴィはぼそりと呟いて兄の胸に縋り付いた。

 茶色のバスローブの胸に顔を埋め、猫の様にすりすりと額を擦り付ける。

(お兄ちゃんを出し抜きたいとか、そういうのじゃないの……。ヴィヴィはただ、普通に抱いて欲しいだけ。ヴィヴィを見て、ヴィヴィを抱いてるって、そうお兄ちゃんに思って感じて欲しいだけなの……)

「……別に、怒ってはいない……」

 そうぼそりと零した匠海は、ぽすと軽い音を立てて高いベッドの上に腰を下ろした。

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ