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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第18章                   

 打楽器の激しい打音と同時に瞼を開いたヴィヴィは、目から下を覆っていた左手を引いてゆったりと微笑むと、優雅に下した両手を腰に当てる。

 中東の音楽を連想させるオーボエの音色にヒップエイト(腰を八の字に回す)の動きを合わせると滑り始める。

 時折ショルダーシェイクの動きを入れながらトップスピードに乗ると、管楽器が軽やかに奏でるファンファーレに合わせてトリプルアクセルへと踏み切る。

 綺麗な弧を描いて降りたヴィヴィは胸を張って満足そうな笑みを浮かべてランディングし、体全体で漲る女王の貫録を表現する。

 徐々に静かになる曲の中、浮かび上がるようなオーボエのエキゾチックな音色に乗せて腕を蛇の様に蠢かすスネークアームスの動きを入れながら助走をし、トリプルアクセルとトリプルトゥーループのコンビネーションジャンプを決める。

 続けてトリプルフリップとダブルトゥーループのコンビネーションジャンプを降りると、フライングシットスピンへ。

 スパイラルシークエンスは百八十度以上開脚したI字スパイラルから両手を離すとヘッドスライドと呼ばれる独特な首の動きを合わせる。

 目の動きも首と同方向に行うことで、より神秘的な雰囲気が醸しだされる。

 やがて曲はハープの音色を挟み、哀愁を持つものに変わる。

 リンク中央で止まったヴィヴィは何度も試行錯誤した花魁道中の外八文字を腰を使って挑発するように行いながら、目の前に柵越しに立つ匠海を見つめる。

(私を見て……目を逸らさないで――)

 兄の視線が自分に注がれていることを確認し満足したようにヴィヴィは俯むくと、後ろへと漕ぎ出す。

 まるで身に纏っている幾枚ものベールを剥(は)ぎ取り風にたなびかせる様に腕を躍らせながらスピードに乗ると、トリプルサルコウからの三連続ジャンプ。

 その後振付を工夫したイナバウアーからのトリプルトゥーループ、トリプルループを立て続けに決めてすべてのジャンプを終えると、さすがにヴィヴィの息も上がってくる。

 フライイングコンビネーションスピンではシットスピンから徐々に上体を起こしていき、レイバックスピン(上半身を後ろに大きくそらしたもの)ではまるで美しく豊かな髪を見せつける様に両腕を後頭部へと添え、徐々にビールマンスピンへと移行する。

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