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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第18章                   

 曲はさらに変化していく。

 フルートとピッコロのまるで急き立てるような音色に背中を押されるように、ヴィヴィは最後に渾身の力を振り絞ってストレートラインステップへと踏みだした。

 静かだった音楽が徐々に大きくなり不安を煽るような音色へと変化していく。

 弦楽器が奏でる重厚なフレーズの繰り返しに、シロフォン(木琴)の軽やかな音がどんどん曲を加速していく。

 サロメがヨハナーンへの恋心を抑えきれず葛藤している様を表現しようと、音に必死に食らいついて懸命に細かなステップを踏むとツイズルで回転しながら移動し、リンク中央近くでフライングコンビネーションスピンを回る。

 最大まで盛り上がったオーケストラの音がぷつりと途絶える。

 その後に聞こえてくるのは、緊迫感を醸し出すフルートの静謐な旋律と、木管楽器の不安を煽るような細やかなトリル。

 ヘロデ王への踊りへの対価として、欲しくて欲しくて堪らなかったヨハナーンを手に入れたサロメは、震える指先で銀の盆に載せられた愛しい人の血塗れの首を掻き抱き、天を仰ぐ。

 曲が終わり、リンクにはヴィヴィの苦しそうな息遣いだけがしていた。

 ゆっくりと首を下してポーズを解くと、パンパンと手を叩く音が聞こえた。

 少しプログラムに入り込みすぎたようだ。

 微動だにせず匠海の拍手を十秒ほど聞いていたヴィヴィはやっと匠海のほうへと視線を移し、ゆっくりと兄の待つリンクサイドへと滑って行った。

 フェンスに辿り着いて匠海の表情を恐る恐る伺ったヴィヴィだったが、兄の表情は強張っていた。

 匠海の瞳とヴィヴィの視線がぶつかってしまい、ヴィヴィの心臓がどくりと波打つ。

 そしてその鼓動は匠海が何も言ってくれないことで、さらに不安で加速していった。

「………………」

(な、何か言って……)

 我慢できなくて俯いてギュッと瞼を瞑ってしまったヴィヴィに、上から声が降ってきた。

「凄いな……一体、何をどうやったらこんな振付が出来るんだ……?」

「え……?」

 言われた意味が分からず、ヴィヴィは匠海を見上げる。

「ヴィヴィがあんなに妖艶な演技が出来るなんて……。知らなかったぞ、俺は」

 やっと匠海が最大限の褒め言葉をくれたのだと気付いたヴィヴィは、徐々に頬を赤く染めていく。
 
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