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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第91章               

「……して」

「え?」

「監禁……して……」

(そうしてくれれば、どれだけ幸せだろう……。お兄ちゃんにそれだけ執着されてると感じられたら、ヴィヴィ、もう何の不安もなくなるかな……?)

 それも悪くないかも……そう思い始めたヴィヴィの心を見透かすように、匠海は上から叱責してきた。

「馬鹿……。スケート出来なくなるだろうっ」

 兄のその言葉に、ヴィヴィはもうやるせなくなって、上に覆いかぶさっている匠海から視線を逸らせた。

(……自分から、言ったくせに……)

 胸の奥がもやもやした。

 いや、ゆらゆら? ぐらぐら? ぎすぎす?

 分からない。

 色んな事がありすぎて。

 疑問に対して回答がなくて、自分の中で解決出来なくて、宙ぶらりんのまま放置されたものが多すぎて。

「ふっ 危ない子だ。監禁してほしいのか?」

 そう面白がって確認してくる匠海に、ヴィヴィは目を逸らしたまま、ゆっくりと目蓋を閉じた。

「うん……。それで、お兄ちゃんが、ヴィヴィ以外の女を見なくなるなら……」

 否――例えそうなったとしても、だからといって自分が女として愛される訳では無いのに。

「馬鹿。俺はお前しか見てないって言っただろう?」

 兄のその声が少し寂しそうに聞こえたのは、自分の聞き間違えだろうか。

(嘘ばっかり……)

 思わずそう突っ込んでしまったヴィヴィは、はっと目蓋を上げて頭の中で訂正した。

(違う……。ヴィヴィ、お兄ちゃんの言うこと、信じるんだった……)

 信じる。

 匠海は自分しか見てない。

 自分以外の女に興味がない。

 もう何度も口にしてくれたその言葉――だから、自分はもう同じ事を兄に言って困らせるのは、やめにしないと。

 ヴィヴィはゆっくりと視線を兄に戻すと、小さく微笑んだ。

「ごめんね……?」

「ん?」

「ヴィヴィ、嬉しい……。お兄ちゃんがヴィヴィ以外見てないって言ってくれて、とっても嬉しいの」

 例えそれが本当で無くても。

 自分は兄を信じると決めたのだ。

 本当は騙されていて、他にもどこかの女と兄を共有していたとしても、それは信じた自分が悪いのであって、匠海が悪いのではない――のか……?

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