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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第92章
「あ、えっと……。ピアノの先生にも同じ事を言われたな、と思って――」
ピアノ講師にこの課題曲を出された時、こうアドバイスされた。
『「喜びの島」はタイトルのごとく、“喜び”が倍増していくことを表している曲。
もちろん、目指す島に近づく訳でその喜びが増していくのだが。
なので、曲がどんどん展開していくごとに、
その喜びの気持ちは素直に表に現されなければならない。
感情を表に出す事を、恥ずかしがったり惜しんではいけない』
ヴィヴィがそのアドバイスをかいつまんで2人に説明すると、「あ~、それは本当に的確なアドバイス!」と同調された。
「じゃあ、その事を念頭に置いて、もう1回だけステップから」
サブコーチの指示に、ヴィヴィは「はいっ」と元気よく返事して、またリンク内へと滑り出した。
その日のランチ。
カフェテリアの一角では、双子をはじめ、学園祭のクラスのリーダーが集まってランチを取っていた。
「やっぱりラインダンスだね~。集中的に、練習しなきゃ」
振付・構成のヴィヴィはそう言いながら、左手にサンドウィッチ、右手にペンを持ってレポート用紙に書き込む。
「今迄、男女別での練習が多かったもんね。動画で見直したらあまりにも足の高さバラバラで、笑っちゃった」
女子ダンスリーダーのカレンが、ピクルスをフォークで突きながら「あはは」と笑う。
「そうだな~。個々のレベルは上がってるんだけど、周りとの同調性がいまいちな~。まあ練習あるのみ、か」
男子ダンスリーダーのアレックスが、ヴィヴィからペンを受け取ると、“横の繋がりの確認”と書き込む。
「全体練習、楽しいから、好き……」
好物のスモークチキンサンドを頬張りながら、そうぼそりと呟いた総監督のクリスに、隣のマイクが「なんだよ……、可愛いじゃないかっ!」と何故か萌えてその金色の頭を撫でていた。
そんな2人を「何やってんのっ!」とみんなが笑いながら突っ込む。