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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第92章
「あ~……、でも双子には悪いけど、今年はジャパンオープンに出てくれなくて、俺らとしては良かったよ。こっちの練習に掛かり切りになれるもんな?」
マイクがそう双子を見比べて本音を漏らせば、カレンがすかさず突っ込んだ。
「バカ、マイク! ジャパンオープンは、シーズン初めの大事な試合なんだよ? 本当ならそこで実戦へ向けて調整したりするんだよね?」
カレンは昔からフィギュアが大好きで、東京の試合に観戦に来てくれたりするので、その辺の事情は詳しかった。
学園祭のちょうど一週間前に行われるその公式戦は、双子も毎年出場していたが、今年は受験に専念する為に出場を断念していた。
ヴィヴィはにっこりとマイクに笑いかける。
「まあね~。でも大丈夫~。初めから受験の為に出ないって決めてたから、そういう風に調整してきてるし、ね? クリス?」
「うん。逆に僕らも、最後の学園祭……。みんなとみっちり取り組めて、嬉しいよ……」
クリスがそうヴィヴィに続くと、そこにいた皆がにや~と笑う。
「「「クリス、可愛い~~♡」」」
口々にそこにいたメンバーがクリスにそう萌えると、当の本人は物凄く嫌そうな顔をした。
「可愛くは、ない……」
「え? 可愛いよ?」
ヴィヴィがそう駄目押しをすると、何故か痛くない拳骨がクリスから降ってきた。
「あはは。ヴィヴィ、オレンジジュース、買ってこよ~」
先程まで混み合っていたカフェテリアの売店が空き始めたの気付き、ヴィヴィは椅子を引いて立ち上がる。
「あ、私も行く~」
カレンがヴィヴィに続いて立つと、2人はきゃっきゃしながら売店へと向かって行った。
その後ろ姿を見つめていた一同は、ほっと胸を撫で下ろす。
「良かった。仲直りしたんだ?」
マイクがそう零すと、クリスが小さく首を振る。
「もともと、喧嘩じゃなかったし……。ヴィヴィ、ちゃんと謝ったから……」
昨日、ヴィヴィがカレンの言葉に怒鳴った事に、クラスメイト達は心底驚いていた。
なにせ、幼少の頃からずっと一緒に過ごしてきて、あんなヴィヴィは皆が見たことが無かったから。