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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第92章            

 2人の部屋を繋ぐ扉を施錠したヴィヴィは、兄の寝室へと入るとにやっと悪そうに嗤う。

(うふふ~。じゃあ、クマさんとウサギさん、連れてきちゃおう)

 寝室の奥のクローゼットから2匹を連れ出したヴィヴィは、背の高いベッドにダイブした。

 今日は『飴』の日。

 何も考えずに兄に身も心も委ね、匠海の事だけを感じられる嬉しい日。

 ベッドヘッドに凭れ掛かって、2匹の衣装の乱れを直したり、1人で寸劇をしたりしていると兄が入ってきた。

「まったく、お前は……」

 茶色のバスローブを纏った匠海が、呆れた様にそう呟くのに、ヴィヴィは「えへへ~」と笑ってごまかす。

 5分袖のナイトウェアを自分で脱ごうとしたヴィヴィを、匠海が遮った。

「まだ脱がなくていいよ。脚、マッサージしてやる」

 まさかの兄のその言葉に、ヴィヴィは目を真ん丸にして驚いた。

「え……? い、いいよ」

(っていうか、お兄ちゃんだって疲れてるんだし……)

「遠慮するな。って言っても、やったことないから適当だけど」

 そう言ってふっと笑った匠海は、ヴィヴィのふくらはぎに大きな両手を添え、リンパに沿ってマッサージを始めた。

「……気持ち、いい……」

「それは良かった」

 イタ気持ちいい、そのちょうどいい力加減でマッサージをしてくれる兄に、ヴィヴィは2体の縫いぐるみを使って寸劇を再開する。

 ウサギさん :「クマさん。お兄ちゃんって、本当に器用だよね?」

 クマさん  :「うん、ウサギさん。お兄ちゃんは何でも出来ちゃって、何でも上手なの♡」
 
 ヴィヴィ  :「でも知ってるぅ~? お兄ちゃんはね~、“変態さん”なんだよ?」

 2匹    :「「え゛ぇ~~っっ!? ドン引き~っ」」

 1人でそう下らないことをやってケタケタ笑い転げているヴィヴィを、匠海は呆れ顔で見やりながらもマッサージを続けてくれていた。 

「ふ……っ そうやって縫いぐるみ抱いていると、ヴィクトリアの小さい頃を思い出す」

 苦笑しながらそう呟いた兄に、ヴィヴィは首を傾げる。

「そう?」

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