パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第92章 　 　 　　　　 　　

「可愛かったな……。後ろに気配を感じて振り向くと、いつもお前がいて、にっこり笑ってて」

「……なんかその言い方、幽霊や背後霊みたい……」

　引き攣った笑みを浮かべてそうおどけたヴィヴィに、匠海はぺちりとふくらはぎを叩き、もう片方のふくらはぎを揉み始めた。

「そうそう、俺が中等部の修学旅行に行く前日から、お前は泣いてベッドに潜り込んできて……。当日はバッグの中に入ろうとするし」

　そう思い出し笑いをする兄に、自分もそれは覚えていたヴィヴィが、肩を竦める。

「ははは、ご迷惑を……」

「ヴィクトリアがいたから毎日退屈しなかったし、楽しかったよ」

　妹の脚に視線を落としたままそう呟いた兄に、ヴィヴィの胸に何故か一抹の不安がよぎる。

「……お兄ちゃん？　家でも出てくの……？」

「は……？　なんでそうなる？」

　顔をあげて不思議そうに自分を見返してくる兄に、ヴィヴィは何とも言えない表情を浮かべる。

「だって、昔ばっかり、懐かしんでるから……」

（なんか、お別れでもするみたいな感じがしたの……）

「出て行く訳ないだろう？　お前がここにいるのに」

　優しく微笑んで妹の不安を解消してくれた匠海に、ヴィヴィはゆっくりと頷いた。

「そっか、良かった。……ヴィヴィは――」

　そこで言葉を区切った妹を、匠海は「うん？」と先を促してくる。

「ん……。ヴィヴィはずっと、お兄ちゃんを見てた……」

「ああ……」

　視線の先、ふくらはぎを揉み終わった兄が、ヴィヴィの膝を折り曲げ太ももへと手を這わしてきた。

　ナイトウェアの裾がはらりと捲れ上がり、何も身に着けていない自分の秘めやかな部分が兄の目前に晒され、ヴィヴィは恥ずかしくてピンク色の裾を手繰り寄せて隠した。

「それで……？」

　先を促す匠海に、ヴィヴィは２体の縫いぐるみを抱き締めながら続ける。

「うん……、物心付いた頃から、お兄ちゃんに抱っこされてた記憶はあるんだけど、それと同じくらい、その背中を見上げてた記憶もあるの……」

「背中？」

「うん……。お兄ちゃんはいつも先に大きくなっていっちゃって……。６歳も離れてるから、ヴィヴィがやっと小学生になっても中学生になっちゃってて……。ずっとその背を追いかけてた」

「ふうん……」