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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第18章
演技がより良くなるように匠海がくれるアドバイスに、ヴィヴィは素直に頷きながら耳を傾けていたが最後の言葉に瞳をぱちくりとさせる。
「品……? 私に……?」
そう言えばアシスタントコーチにも前に言われたことがあったような気がする。
ヴィヴィは生まれ持っての品や華があるから、観客を魅了するフィギュアに向いていると――。
「ああ。普段でもたまに俺でも『おっ』と思うときあるよ。一応箱入り娘のお嬢様だからな、ヴィヴィも」
「たまに……? 一応……?」
褒めてくれているのだろうが、端々に引っかかる言葉を見つけヴィヴィのピンク色の唇がつんと突き出てくる。
そんなヴィヴィの頭をぐしゃぐしゃに撫でた匠海が笑う。
「ほら、もう遅いから帰ろう。明日、コーチ達の前でも見せるんだろう?」
匠海の指摘に、ヴィヴィは現実に引き戻される。
そうだ、匠海に見てもらうのもヴィヴィにとっては一大事だったが、最終目標は「コーチ陣にヴィヴィがどれだけサロメをやりたがっているかを見せて、認めてもらうこと」だった。
(決戦は今日の夕方――何が何でも認めてもらわなきゃ!)
匠海の太鼓判をもらって舞い上がりそうになる心の帯を締め直し、ヴィヴィは大きく頷いた。