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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第92章
「ん? 俺が食べたいんだろう?」
所謂、騎女位の状態で兄の腰の上に放り出されたヴィヴィは、焦って匠海を見下ろす。
「え、えっと……、そういう意味では……」
(ないのですが……。えっちな意味では、ないというか……)
自分でも説明出来ないが、そういう意味で兄を食べたいと思った訳ではないのは確かだ。
「え~……。俺はヴィクトリアに、俺のこれを食べて欲しいな?」
まるで駄々っ子のようにそう言い募る匠海に、ヴィヴィは苦笑した。
「……えっち……。でも、可愛いの♡」
「お前は……、男に可愛いって言うの、止めなさい」
妹の太ももをぺちりと叩いてそう諭す兄に、ヴィヴィはこてと首を傾ける。
「え~? ……やだ」
「こら」
めっと諌める様に細められた匠海の瞳に、ヴィヴィは小さな頃によくそうされた事を思い出し嬉しくなった。
「うふふ」
(やっぱり、好き……。ヴィヴィはやっぱり、お兄ちゃんに身も心も愛されたいの……)
ヴィヴィは肩から引っ掛けるだけになっていたナイトウェアを両手でたくし上げると、頭から抜き取った。
暗い寝室に、華奢な白い躰がぼんやりと浮かび上がる。
少し乱れた金色の髪に隠れた小さな乳房はその中心を色濃くし、細い腰はぺたりと兄の腰の上に密着していた。
「お兄ちゃん……」
そう囁いたヴィヴィの声は少し震えていた。
匠海を好きだという気持ちが内からどくどくと湧き上がり、溢れ出るのを止められなかった。
好きなの。
大好きなの。
ずっと、ずっと物心付いた頃から、自分は匠海しか見てこなかった。
血の繋がった実の兄――だから何度も諦めようとしたし、自分の運命を呪いもした。
けれど、兄は今目の前にいて、自分の躰を抱いてくれている。
だから、どうしても諦め切れない。
「……――っ」
目頭がじんと熱くなり、ヴィヴィは涙が零れそうになるのを必死に耐える。
愛して下さい。
自分を『妹』としてじゃなく、一人の女として、どうか――。
どんどんと自分の内から生み出される兄への愛に、胸が苦しくて。
自分のこんなちっぽけな躰一つじゃ抱えきれないくらい、大きくなり過ぎて。
それを兄に共有して欲しくてしょうがない。
自分を受け止めて欲しい。
この恋心をちゃんと認めて欲しい。