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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第92章
自分にとって心底大切なフィギュアの衣装で抱かれたのも、
スパでまるで道具の様に抱かれたのも、
表舞台に立っている自分を散々扱き下ろしたのも、
ドーピングに引っ掛かるかも知れないのに潤滑剤を使ったのも、
「お前を好きになりそうで恐ろしい」なんてうそぶいたのも、
朝比奈や五十嵐にばれそうな場所で抱いたのも、
中に出さないでと懇願したのに出したのも、
自分では一切避妊してくれないのも、
抱き人形の様に抱き潰し、捨て置かれたのも、
拘束して抱いたのも、
自分以外の女とも関係を持っていただろうことも、
自分の今の気持ちを伝えて匠海と向き合おうとしたヴィヴィに、
『近親相姦』の相手としての『妹』に執着していると豪語したのも。
全て、すべて、
『妹』である自分を、ここまで貶めるためだったのだ――。
そうして、匠海からは見えぬヴィヴィの内側は、なるべくして臨界状態に達した。
兄の求める自分の表側と、本当の自分である裏側が、ぴしぴしと微かな音を立てて乖離していく。
その絶望の音を、ヴィヴィは妙に静かな心持ちで聴いていた。
(『人形』――なんだ……。
やっぱりヴィヴィは、お兄ちゃんの 『人形』 だったんだ――)
ぴし。
ぴしり。
少しだけ近付けたと思った互いの心が、完全に離れていく。
自分の外殻のその一枚内側の、脆くて危ういもう一つの内殻。
そこに走る幾筋もの亀裂。
それらが中心へと到達した途端、そこに木霊したのは、金属音にも近い、陶磁器の破裂音。
「お兄ちゃん……。ヴィヴィ、後ろ向きがしたいな?」
匠海の腰に跨ったままのヴィヴィが、恥ずかしそうに兄にお伺いを立てる。
「後ろ、怖くないか?」
心配そうに妹を見上げる兄に、ヴィヴィは瞳を細める。
「ん。大丈夫」
「いいよ。じゃあ、俺のこと咥えたまま、後ろを向いてごらん?」
「ん……。お兄ちゃん、見ててね?」
自分が動く時に少し不安そうにそう確認するのも、いつものヴィヴィで。
「ああ、当たり前だろう?」
蕩けそうな微笑みを浮かべた兄に小さく頷いたヴィヴィは、上半身を後ろに向けると、細長い脚で匠海の躰を後ろ向きに跨ぎ直した。