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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第92章            

「うん……、お兄ちゃん……っ ヴィヴィはずっと、一緒だよ」

 昏く濁った灰色の瞳を閉じながら、ヴィヴィもしっかりとそう口にした。

「――っ ああっ ヴィクトリアっ 俺だけの、ヴィクトリアっ!」

 感極まって妹の細い背中に幾つもの口付けを落とす匠海に、ヴィヴィはこくこくと大きく頷く。

 そして乱れた黄金色の髪が覆い隠したその奥で、ヴィヴィは “自分” としての最後の言葉を発した。

「うん、ヴィヴィもう、お兄ちゃんがいてくれたら、それでいい。

 もうっ もう何もいらない――っ!!」

 そう掠れた声で叫んだヴィヴィは、わぁっと号泣した。

 シーツを両手で握り絞め、その中に顔を埋めて嗚咽を漏らすヴィヴィの腰を、匠海がぐっと掴み直す。

「……――っ 行こう。 行こう、ヴィクトリア……。俺と、一緒にっ」

「……っ ぅん……っ うん――っ!」 

 がむしゃらに自分を穿つ兄を受け止めながら、ヴィヴィは何時までも何度でも頷く。



 どこか遠くに連れて行って。

 私達の事を知る人間のいない場所に連れて行って。

 もう、誰にも会いたくない。

 獣の様に一日中抱き合って、互いの全てを貪り合って、

 そして共に互いを喰い尽くしながら――いつか朽ち果ててしまいたい。

 家族も、スケートも、友達も、将来も、

 もう、何もかもが兄の前においては無意味になる。

 もうここに今までの自分はいない。

 自分は兄だけの『人形』。

 兄の欲望を映し出すだけの鏡。

 そうなることが、ヴィヴィの幸せ……、ヴィヴィの望み……、ヴィヴィの希望――。



「ヴィクトリア……」

 切なそうな掠れた兄の声に、ヴィヴィはうっそりと視線を上げる。

(……どうして、そんな顔をしているの……? 泣きそうな顔、しているの……?)

「お兄ちゃん……好きよ……愛してる……」

「ヴィクトリアっ」

 まるでヴィヴィをひと時も離したくないという風に抱き締める匠海を、細いその掌で撫で擦る。

(大丈夫。ヴィヴィがいるよ。ここに、いるよ……)

「愛してる……。ヴィヴィの、お兄ちゃん……」

 自分の愛の言葉で、また腰を動かし始めた兄に、ヴィヴィはゆっくりと腕を伸ばしてしがみ付いた。

 兄の広くて逞しい胸の中。

 そこだけが自分の居場所――なのだから。

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