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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
9月27日(日)。
早朝5時前。
ヴィヴィは長い睫毛を湛えた目蓋を、ゆっくりと開いた。
その奥から露わになった灰色の瞳が、うつらうつらと左右に振れ、隣にいた人物を認めて止まった。
うっそりと細められたその瞳は、実の兄の穏やかな寝顔を映しだす。
「……おはよう、お兄ちゃん……」
掠れた声でそう囁いたヴィヴィは、ゆるく巻きつけられていた兄の腕の中から這い出る。
四六時中匠海の傍に寄り添いたいが、現実は自分の部屋に戻らなくてはならない。
5時になったらいつも通り、朝比奈が起こしに来るから。
ヴィヴィは寝室の隅に据え置かれた一人掛けソファーの上に、畳まれていたナイトウェアを見つけ、袖を通す。
静かに兄の寝室を出ようとしたヴィヴィに、目を覚ました匠海が声を掛けてきた。
「……ヴィク、トリア……?」
その掠れて気だるげな声に、ヴィヴィの躰の奥が疼いた。
ゆっくりと振り返ったヴィヴィは、嬉しそうに微笑みながらベッドの上の兄に歩み寄る。
「おはよう、お兄ちゃん」
そう囁いたヴィヴィに腕を伸ばした兄は、柔らかく妹の躰を抱き締める。
「おはよう……、ふわわ……」
「眠そうだね?」
ちゅっと兄の唇におはようのキスを落としたヴィヴィに、匠海は苦笑する。
「お前が、可愛過ぎるからだよ」
「…………? 今日、何時におうち、出る?」
ヴィヴィは不思議そうに首を傾げると、兄にそう確認する。
「ん~。8時過ぎくらい?」
「分かった。じゃあ、朝比奈に朝食は7時に、って伝えておくね?」
目の前の兄は心底眠そうだった。
今も切れ長の瞳をしぱしぱと重そうに瞬かせている。
「ああ。後でな?」
「うん。楽しみにしてるね」
ヴィヴィはそう言うと、もう一度匠海の唇にキスし、寝室から出て行った。
白を基調とした自分のリビングに足を踏み入れたヴィヴィは、寝室へと戻ろうとし、ふと足を止めた。
白いルームシューズに包まれた足を向けたのは、部屋の一角に置かれたガラス張りの白いキャビネット。
背の高いその中に、所狭しと並べられた物達を見つめるヴィヴィの瞳は昏かった。
がちゃりと静かな音を立てて廊下から開かれた扉。
そこから入ってきたのは案の定、双子の執事・朝比奈で。