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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第19章
五月一日はクリスの誕生日だった。
そして一日遅れて二日がヴィヴィの誕生日。
そして偶然にも五月五日は匠海の誕生日でもあった。
なので篠宮家ではいつも五月の一日から五日の間の都合の良い日に合わせ、バースデーパーティーを開いていた。
今年はゴールデンウィークに双子がロシアへ振付に旅立ってしまうので、一日にパーティーをすることになっていたのだ。
そんなことなどすっかり記憶の彼方に追いやってしまっていたヴィヴィだったが、急に顔を青ざめて口元を両手で覆った。
「ど……どうしよう……」
ヴィヴィの突然の動揺に、兄二人が何事かとヴィヴィを見下ろしてくる。
「私……お友達にパーティーの招待状、出してない……」
この世の終わりのような悲痛な声でそう漏らしたヴィヴィに、クリスと匠海は顔を見合わせて肩を竦める。
「なんだ、そんなこと……」
「何をいまさら――」
呆れた様子でそう口々に返してきた兄達を、ヴィヴィは涙目で見上げる。
十五歳の誕生日はこの世で一回しかないのだ。
特に今年は高等部に上がって、ヴィヴィはそのことも皆で祝いたかった。
「そんなことって……! いまさらって……っ!」
両手をぎゅっと握りしめて泣きそうな声を出したヴィヴィに、二人は苦笑した。
「ヴィヴィ、落ち着いて。誰をバースデーパーティーに呼びたかったの?」
匠海がヴィヴィの右手を取り上げ、軽く握りしめる。
「え……そりゃあ、クラスのみんなとか……同じリンクの子達とか……」
「それなら、クリスがちゃんと連名で招待状を送っているよ」
匠海のその言葉にクリスを見ると、双子の兄は頷いて同意する。
「あ……あと、宮田先生とか……あっ! 三田さんも呼びたかったのに」
いつも世話になっている振付師の宮田や、NHKの三田ディレクターも呼びたかったとヴィヴィは顔を曇らせる。
「大丈夫。僕が招待したから」
クリスはヴィヴィの空いた左手を握ると、顔を覗き込んでヴィヴィを落ち着かせようとする。
「お兄ちゃん……クリス……」