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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
いつの間にかうとうとしていたヴィヴィは、兄に頭を撫でられて目を覚ました。
「ヴィクトリア……。スーパー行くけれど、車で寝てるか?」
「ぅ……ん……? スーパー……? 行くっ!!」
起き抜けでぼうとしていたヴィヴィだったが、“スーパー”という単語に、物凄い勢いで喰い付いた。
「ん……、眠くないか?」
そう囁きながら妹の片頬を大きな掌ですっぽりと覆った匠海に、ヴィヴィはしゅんとする。
「うん。っていうか、ごめんなさい……。ヴィヴィ寝ちゃって……、1人でドライブ、つまらなかったでしょう?」
「全然。綺麗な秋晴れで、ドライブ日和だよ」
「そ……? うふふ、ありがとう。お兄ちゃん大好きっ」
妹がその掌の中でにっこりと笑うのを嬉しそうに見ていた匠海は、ふと何かを思い出したようにその手を離し、後部座席のバッグをごそごそ漁った。
「忘れるところだった。これ、ヴィクトリアにプレゼント」
そう言ってぽんとソックスを纏った膝の上に置かれたのは、某ブランドのロゴが入った長方形の黒い箱。
「ん、なあに?」
不思議そうにそれを両手で持ったヴィヴィに、兄は「開けてごらん?」と促した。
ヴィヴィは不思議そうにリボンを解き箱を開けると、中には黒い布に包まれた皮のメガネケースと――、
「わぁ~、サングラス?」
兄の贈り物とは、黒のサングラスだった。
オーバーサイズのそれは一見シンプルだが、柄の内側に小さなモノグラムが沢山刻印されていて、それがちらりと垣間見えるのがとてもお洒落だった。
サングラスと兄の顔とを交互に見比べて驚くヴィヴィに、匠海が理由を説明する。
「お前、一応五輪メダリストで、CMも流れてて目立つからな……。試合直前に遊んでたって目撃情報あげられたら、面倒だろう?」
兄はそう言うと、ヴィヴィの手からサングラスを受け取り、妹の小さな顔にかけた。
「似合う~?」
両頬に手を添えそうおどけてみせたヴィヴィに、兄は頷く。
「ああ。ヴィクトリアは童顔なのに、鼻が高くて彫りもまあまあ深い、不思議フェイスだからな。とても似合うよ」
「不思議フェイス~? あははっ」
初めてそんな風に自分の顔を評価されて、ヴィヴィは面白くて笑った。