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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章          

「うん。ヴィヴィがお兄ちゃんをだぁ~いすきな気持ちを表現してみたっ うふふ」

「はいはい。じゃ、行こうか」

 そう軽く流されヴィヴィは一瞬唇を尖らせたが、したままだったシートベルトを外してドアノブに手を掛け、止まった。

「ね……、お兄ちゃん……」

「ん?」

「これって、で、デート……?」

 何故か兄に背を向けたまま尋ねるヴィヴィに、匠海の優しい返事が返ってくる。

「ああ、そうだよ」

 がちゃりと扉を開けて降りた匠海は、ぐるりと車の前を周り、ヴィヴィのいる助手席を開いた。

「あの……、手……繋いで、いい……?」

 恐る恐るそう発しながら兄を上目使いに見上げれば、帰ってきたのは極上の微笑みと大きな掌だった。

「ふ……、いいよ。おいで」

「~~っ うんっ!!」

 飛び付く様に兄の掌に縋り付いたヴィヴィは、大きなサングラスの下の薄い唇で弧を描いた。

 立体駐車場の連絡通路を伝い入ったそこは、スーパーとは違い、大型ショッピングモールだった。

「ほほぉ……。これが世にいう、ショッピングモール……」

 フランス語でそう呟きながらきょろきょろするヴィヴィに、匠海もフランス語で「よそ見し過ぎて転ぶなよ?」と注意してくる。

 ヴィヴィは兄と手を繋ぎながら、背の高い匠海を見上げる。

 いつもは20cm程の身長差が、今日は15cm程。

 5cmの太ヒールのパンプスに、グレーのオーバーニーソックス。

 ゆるく巻いた金色の髪はルーズに三つ編みにされ、白黒のボーダーニットを肩から掛けたその下はスタンドフリルのノースリーブシャツで、その首元には黒く細いリボンが。

 そして共布の細いサスベンダーが付いたハイウェストの、ライトグレーのショートパンツ――というモノトーンの出で立ちの今日のヴィヴィには、匠海がプレゼントしてくれた黒のサングラスがよく似合った。

 そして、よく目立った。

 ヴィヴィの身長は165cmで、今はヒールを履いた170cmの長身、しかも細くて手足も長い。

 BSTでは周りが皆長身なので気付かないが、一歩外に出ると「自分は背が高いんだな~」とヴィヴィはいつも思っていた。

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