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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
そしてヴィヴィ以上に容姿に恵まれた兄の匠海は、188cmで9頭身。
白の生成りのシャツにグレー・黒のリバーシブルのざっくりしたストールを巻き、グレンチェックのクロップドパンツに黒のドライビングシューズの足元。
そんなでかくて見目良い兄妹は半端なく目立っていたが、ヴィヴィは気付いてなかった。
しばらくぼ~っと兄に見惚れながら歩いていたヴィヴィは、それに気付いた匠海にエスカレーターで頭突きされた。
「あいた……。そう言えば、スーパーに何しに来たの?」
「ランチとディナーの材料、買いに来た」
「あ、そっか~」
自分では今回のデートについて何も考えていなかったヴィヴィは、能天気にふんふん頷く。
「どちらか外に食べに出てもいいけど?」
エスカレーターの下にいる匠海がそう妹に尋ねてくるが、正直ヴィヴィは目の前にある匠海の唇にキスしたい――そればかりを考えていた。
だからそのままを口にした。
「ん~……。ヴィヴィ、別荘で2人っきりで過ごしたいな~」
「…………俺も」
エスカレーターを降りながらぼそりとそう呟いた匠海に、ヴィヴィはにんまりする。
「うふふ。じゃあ、どっちかはヴィヴィが作るね?」
「……それは……遠慮する……」
心底嫌そうにそう呟いた兄に、ヴィヴィは纏わりつく。
「え~? なんで~?」
「腹、壊しそう……。俺が腹下したら、運転出来なくなって帰れなくなるだろう?」
「なっ!? ヴィヴィ、お兄ちゃんにそんな変なもの食べさせないよっ?」
料理経験ほぼ皆無のくせに、そう大きな事を言ってのける妹に、兄は嘆息する。
「そうか? 生煮え、丸焦げ、油ギトギト、になるのが目に見えてるんだけど……」
「ひ、酷い~……っ」
薄い唇を~の字に歪ませたヴィヴィが、弱々しくそう唸る。
「ふ……。だから、ヴィクトリアは俺のお手伝いをしてくれ」
「ん~……。分かったよぉ。そう言えばね~?」
ヴィヴィは専門店前を通る食料品売り場の道すがら、以前料理長と海苔巻きを作った体験を、得意げに兄に聞かせた。