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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
レジに並ぶ匠海の傍、レジ近くの商品を冷かしていたヴィヴィは、視線を感じてふと顔を上げた。
日曜ということもあり客層豊かなショッピングモールには、ヴィヴィと同じくらいの年齢の少女達もいて。
興味津々に自分と兄を見て、こそこそ喋っている数人の女子とサングラス越しに目が合ったヴィヴィは、驚いてその場に立ち尽くした。
「まじ可愛くない?」
「ね~っ お人形さんみたい。外人モデルさんかな?」
「え、芸能人っ? 男の人もマジイケメンだしっ」
きゃあきゃあ騒ぎ出したその女子達に気を引かれた数人の買い物客も、兄妹に興味を持ち始めた。
ばれたらどうしようとおろおろし始めたヴィヴィの手がくんと引かれ、そして気付いた時には兄の腕の中にいた。
「……――っ」
左の胸に妹を隠すように片腕で金色の頭を軽く抱き込んだ匠海は、カードで手早く会計を済ますと、店員が袋詰めしてくれたレジ袋を手に歩き出した。
手を引かれて大人しく着いて来るヴィヴィに、エスカレーターに乗った匠海が上から見下ろしてくる。
「大丈夫だって。誰も写真撮ってなかったし、お前だってこともばれてない。万が一ネットに流出しても、相手は実兄の俺なんだから、な?」
「ん……、そうだよね……」
兄の言葉にも表情が硬いままのヴィヴィに、匠海が心配そうにその顔を覗き込んでくる。
「……大丈夫か?」
「うん……、ただ、驚いて固まっちゃっただけなの。あはは」
そう笑い飛ばしたヴィヴィの白い頬を、匠海が指先でふにと摘まむ。
「お前は本当に可愛いからな。皆が見てしまうのもしょうがない」
「またまた~っ お兄ちゃんを見てたんだもんっ マジイケメンって言われてたっ」
何故かそう小声で唸った後、頬を膨らませたヴィヴィに、兄は苦笑しながらエスカレーターを降りて手を引いた。
「ふ……っ まあそういう鈍感なところも、可愛いよ」