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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章          

「カバは?」

 兄のその提案に、ヴィヴィは心底嫌そうな顔をした。

「えぇ~~? カバさん~~? なんか、やだっ」

「カバは今、一番最強の動物って言われてるけど?」

 匠海が言うことはヴィヴィも知っていたが、カバ = 汚れた水の中に居て、なんか口臭そう と酷過ぎるイメージしかなくて。

「やだぁっ お兄ちゃんはもっとカッコよくて綺麗なのがいいんだもんっ うん……オオカミさんがいいな!」

 大型犬の様に優しげに見えもするがそれだけでなく、野性も感じさせる森の狩人。

 ヴィヴィは自分のそのチョイスにとても満足そうに笑う。

「まあ、それでいいよ」

 苦笑しながら妹の乱れた三つ編みを解く匠海に、ヴィヴィはちゅっと口付けた。

「うふふ。ヴィヴィのだぁい好きなオオカミさん♡」

「はいはい。お風呂、入ろうか」

 ヴィヴィの頭をぽんと撫でた匠海は、ゆっくりと上半身を起こした。

「あ、ヴィヴィ、お湯溜めてこようか?」

「もう準備万端。やる前に溜めておいた」

 そう当たり前のように答えた匠海は、ヴィヴィの躰に腕を伸ばし、その華奢な躰を抱き上げた。

「あはは。さすが、お兄ちゃん」

 ヴィヴィはそうケタケタ笑いながら、兄の首に縋り付いた。








 お風呂を使った兄は、三つ編みをし直すヴィヴィを置いて、先にキッチンへと向かって行った。

 ヴィヴィは纏っていたバスローブから持って来ていたルームウェアに袖を通し、キッチンへとぱたぱた駆けて行く。

「おに~ちゃ~んっ」

 甘い声を上げて、冷蔵庫を覗き込んでいた匠海の腰に背後から纏わり付く。

「お、来たな?」

「おに~ちゃん、おに~ちゃんっ」

 ヴィヴィはグレーのVネックTシャツにブラックデニムとラフな格好に着替えた兄の背に、その顔を擦り付ける。

「ん? どうした」

「甘えてるの、うふふっ」

 そう甘ったるい声で答えたヴィヴィの腕を解いた匠海は、冷蔵庫の扉に妹を押し付けた。

「なに? ランチじゃなくて、お前を食べろってか?」

 そう色気たっぷりに迫ってくる匠海に対し、ヴィヴィは能天気に本音を漏らす。

「え~、ヴィヴィお腹空いたよぉ~」

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