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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
嬉しそうに鼻歌を歌うヴィヴィは、全て洗い上げて綺麗にしたボウルの中に野菜を入れた。
「ん、洗えた? じゃあ、キュウリ、切ってごらん。縦に4等分にするんだよ」
「は~い」
まな板の上にきゅうりを置いたヴィヴィは、包丁を振り上げようとして――止めた。
「ん~と……。四等分ってことは、こう切ってこうか~」
ぶつぶつ呟くヴィヴィの横で肉を焼いていた匠海は、妹に気付かれないようにずっとその様子をハラハラしながら見守っていた。
「ていっ ていっ」
謎の掛け声とともにキュウリを切り終えたヴィヴィは、それを手にして匠海のほうを振り返る。
「OK~?」
「駄目、へた付いたままだろう?」
そんなやり取りを繰り返しながらヴィヴィが1人で作り上げたのは、野菜スティックだった。
野菜を切ってグラスに刺して出来上がりなだけなのに、ヴィヴィはスマホを取って戻ると、嬉しそうに写真に収めていた。
「次は~?」
「トマトの種を取り出した後、1cm角に切ってくれるか?」
「は~い」
ヴィヴィはまたトマトをじゃぶじゃぶ豪快に洗うと、まな板の上で対峙する。
「う~ん……。今度の敵は、手強いな……」
またぶつぶつ呟きながら、何とか匠海の言うように切り終えたヴィヴィに、兄はホタテらしき貝と格闘しながら次の指示を出す。
「じゃあ、庭からハーブを取ってきて。全ての種類を少しずつ……。あ、バジルは分かるな? バジルは多めで」
「は~い」
素直に返事したヴィヴィは、小さな籠を手に庭へと駆けて行った。
ここの別荘は管理人の手が行き届いているので、庭も青々と美しい。
バジル、ミント、ディル、レモングラス……と目についたハーブを少しずつ摘み始める。
摘む度にいい香りが辺りに広がり、ヴィヴィの小さな顔がにんまりする。
「♪お兄ちゃんって 何でできてるの?
お兄ちゃんって 何でできてるの?
優しさと 意地悪さ
沢山のお酒
あと、えっちなもので できてるの ♪」
マザーグースの歌の、そんな替え歌を口ずさみながらキッチンへと戻れば、匠海にじろりと睨まれた。
「お~ま~え~な~……っ」
「あ……、聞こえてた?」
ぺろっと小さく舌を出したヴィヴィに、兄がこつりと拳骨を落とす。