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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
「はあ……、じゃあハーブ、水で洗って」
「は~い」
その後も匠海の指示通りてきぱきとお手伝いをしていると、40分くらいで全ての料理が完成した。
ダイニングテーブルに料理を運ぼうとしたヴィヴィに、匠海がウッドデッキの方を指さす。
「外で食べようか。今日、暖かいし」
兄のその素敵な提案に、ヴィヴィは有頂天になりはしゃいだ。
ブルスケッタ
ローストビーフ
野菜スティック
ホタテのグラタン
「……お兄ちゃんって……」
美味しそうでしかも彩り豊かにセンス良く盛り付けされた料理達に、ヴィヴィは言葉を失う。
「俺が、何?」
取り皿やドリンクを運び込む兄が、不思議そうにヴィヴィに尋ねてくる。
「本当に、完璧人間だよね……。ヴィヴィ、ちょっと今、引いちゃった……」
唇を真一文字に引き結んだヴィヴィに、匠海が籐編みのソファーに腰を下ろし、少し悲しそうな声で続けた。
「あ~……、実はよくそれが原因で、女に振られた」
「――っ え゛ぇ~~っ!?」
目を真ん丸に見開いたまま絶叫し、立ち尽くすヴィヴィを、匠海は肩を竦めながら見上げる。
「俺といると息苦しくなるって。隙が無く、弱点が無く、自分にも完璧を求められているみたいで嫌ってな」
「………………」
言葉を失っているヴィヴィの手を引いて、匠海は自分の隣に腰を下ろさせた。
「まあ、全部過去の話だ。ほら、食べよう。いただきます」
「うん……、いただきます……」
そう言いながらも膝にナプキンを広げたまま動かないヴィヴィを、匠海が心配そうに覗き込んでくる。
「……どうした? まだ引いてるのか?」
「ううん……。お兄ちゃんは確かに完璧人間だけど、そうじゃないなあと思って」
ふるふると頭を振ってそう呟いたヴィヴィに、
「そうじゃない?」
と匠海は不思議そうに続ける。
「うん。だってお兄ちゃんは甘えん坊だし、変態さんだし、たまに興奮して周りが見えなくなってるし」
「……――っ お、お前……」
妹のあんまりなその評価に、匠海が絶句ののちそう唸る。
「ヴィヴィはそこも好き……。たまに困ることもあるけれど、お兄ちゃんの全部が大好きだよ?」
そう言ってにっこり微笑んだヴィヴィは、何故か次の瞬間、ソファーの上に押し倒されていた。