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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章          

「ヴィクトリア……っ」

 そううっとりと囁きながら妹の首元に舌を這わせる兄と、その熱く濡れた感触に、ヴィヴィは「ひゃうっ!?」と軽く啼いた。

「……っ!? お、お兄ちゃん、ら、ランチは?」

「そんなものよりお前が食べたい。骨の髄までしゃぶってしまいたい」

 まるでその言葉を体現するかのように、妹の浮き出た鎖骨を舌で辿り始めた匠海に、ヴィヴィは瀕死の子猫の様な声を発した。

「し、死ぬ……っ」

「お前はどうなんだ? 俺とランチ、どっちが食べたい?」

 両手の指に兄のそれを絡ませられ、上から切なそうに覗き込まれ、そして触れ合った兄の腰の反応、という3つの誘惑と共にそう確認してくる匠海。

 ヴィヴィはその全てにくらくらし、「そんなのいつもだったらお兄ちゃんを取るに決まってるっ」と思いながらも、発した答えは――、

「ん~~、今は、ランチ」

「……っ ぶはっ ランチかよっ!?」

 目の前でそう吹き出した兄に、ヴィヴィは力説する。

「うん、だって、せっかくお兄ちゃんが作ってくれたんだもんっ ヴィヴィ残さず食べたいのっ」

「ふ……。そうだな。じゃあ、キスだけさせて」

「うん」

 優しく口内を弄られる兄の口付けに、ヴィヴィはうっとりと身を委ねながらも、「今日、何回ちゅーしたんだろう?」とどうでもいい事を考えていた。

「ふっ ヴィクトリア。バジル、摘み食いしたな?」

 ぺろりと妹の薄い唇を舐めた匠海は、ヴィヴィの味からそう指摘した。

「えへへ。美味しそうだったから、トマトくるんで食べちゃった~」

 躰を起こされて、兄の作った料理達に「美味しいっ」を連発していたヴィヴィは、大分食べてから口を開いた。

「っていうか、よく考えたらお兄ちゃん、弱点あるもんねえ~?」

「俺に弱点? 無いよそんなもの」

 不遜な笑みを浮かべながら帆立を頬張る兄に、ヴィヴィはにやりとする。

「え~? まず、ナマコ、駄目でしょう?」

「う……っ」

 図星を刺された匠海が、そう唸る。

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