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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章          

「~~っ よ、夜、しよう?」

「ん?」

「夜、ヴィヴィの事、いっぱい可愛がって?」

 最初からそのつもりで来ていたヴィヴィは、頬を染めながらもしっかりと兄の瞳を見上げてそう懇願した。

「――っ ああ、分かった。もう、寝かせられないかもっ」

 明らかに妹の言葉で欲情した様子の匠海に、ヴィヴィはこくりと頷く。

「ん……、いいよ。学校、休んでもいい」

 日曜に泊りがけという事は、月曜は学校も仕事も休むという事だと思ってここに来たのは、どうやらヴィヴィだけだったらしい。

「俺は会社、休めないわ……」

「あ、そ、そっか……」

「朝早く出たら、学校に行く時間には間に合うように帰り着くよ」

 そう言ってもう一度妹のおでこにキスした匠海に、ヴィヴィは素直に頷いた。

「ん。分かった」







 その後、温かい紅茶を淹れてくれた匠海と一緒に、ヴィヴィは夕暮れを見つめていた。

 最愛の兄の股の間に横抱きされて、剥き出しの両脚の上には暖かなブランケットを掛けて貰って。

 こんなに大切にして貰えていいのだろうかという不安と、1分1秒でも兄に寄り添って過ごしたいという欲望を抱え、ヴィヴィは赤く染まり始めた水平線を見つめていた。

「こんなにゆっくりしたの、いつぶりだろ……」

 いつも分刻みのスケジュールで、スケートと勉強に追われる毎日で。

 これからはそんなものに縛られず、兄に付き従う――そんな毎日が永遠に続いていく。

 しみじみそう呟いたヴィヴィに、匠海が労わる様に優しい声を掛けてくれる。

「ああ、また明日から忙しくなるだろうから、ゆっくり骨休めしなさい」

「……ん、そうだね……」

 ヴィヴィの思考と兄の言葉が噛み合わない。

 けれどヴィヴィは静かに従順に頷いておいた。

 気温が下がり始め、匠海がウッドデッキのファイヤーベースで焚き火を起こしてくれた。

 燃え上がる炎にぱちぱちと爆ぜる材木と、絶え間なく聞こえてくる潮騒。

 そして目の前に広がる夕日。

 それらから呼び起される記憶は、1年半前のもの。

 自分が妹という立場を超え、実兄である匠海に気持ちをぶつけてしまった――その記憶。

 そして今、その同じ場所にこうして身を寄せ合う2人。

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