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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
ヴィヴィは昔の自分に、心の中で語り掛ける。
『ヴィヴィは、お兄ちゃんの全てを受け止められる存在に、なれたよ。
そしてヴィヴィは、その事に無類の喜びを感じてるよ。
だから、貴女がした行為は、間違いなんかじゃなかったの。
決して、間違いなんかじゃなかったの――』
そう心の中で囁き、目蓋を閉じたヴィヴィに、兄の声が降ってきた。
「俺の可愛いヴィクトリアは、何でできてるんだろうな……?」
兄のその突然の問い掛けに、ヴィヴィはふと視線を上げる。
「え……?」
「さっきの替え歌……。勝手に俺の歌詞を作ったくせに」
「あ……。そうだったね」
マザーグースの歌の1つ、それの兄バージョンを作って歌っていた事を思い出す。
「ん~、ヴィクトリアは、そうだな……」
そう言いながら首を傾げた匠海に、ヴィヴィは何故か半眼で口を開く。
「どうせ、『お子ちゃま』と『お馬鹿さん』でできているって言うんでしょう?」
「はは。先に言われてしまった」
楽しそうにそう笑う兄に、ヴィヴィは「やっぱり~」と頬を膨らます。
「嘘。冗談……。ヴィクトリアは、愛情でできてる」
「……え……?」
兄の意外な言葉に、ヴィヴィはきょとんとする。
「ヴィクトリアは、深い愛情と、スケートと、ん~……、ああ、天真爛漫でできてる」
そう自信満々に言って、腕の中のヴィヴィを覗き込んでくる匠海。
「………………」
「あれ、不満か?」
無反応のヴィヴィに、匠海が不思議そうに尋ねてくる。
「ん……。スケートじゃなくて、“お兄ちゃん”かな?」
無表情でそう言って首を傾げてみせたヴィヴィに、兄は吹き出した。
「あははっ お前、どんだけ俺の事好きなんだよ。じゃあ――
♪ヴィクトリアって 何でできてるの?
ヴィクトリアって 何でできてるの?
愛情と 天真爛漫
お兄ちゃん
そんな素敵なもので できてるの ♪
で宜しいですか? 我が家のお姫様?」
ちゃんと韻を踏んで歌ってくれた匠海に、ヴィヴィは満面の笑顔を浮かべた。
「うふふ。宜しいでございますわ♡」
お姫様然としてそう答えたヴィヴィを、匠海が苦笑しながらこつりと頭突きした。