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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
1年半前のあの日。
兄の寝室で、兄を拘束し、無理やり穢したあの日。
ヴィヴィの小さな口の中で、兄の昂ぶりは喜び打ち震えていた。
口では散々嫌がり、叱責されたけれど、でもすぐに大きくなったから、きっと気持ち良さは感じてくれていたのだろう。
その時の事を思い出し、恍惚とした表情を浮かべたヴィヴィは、兄のそこに顔を寄せちゅっとデニムの上から口付け、頬擦りした。
ヴィヴィのその尋常じゃない言動に、匠海は言葉を失っていたが、恐るおそる妹に囁いてくる。
「ヴィクトリア……? 愛しているんだ、頼む……、聞いてくれ」
匠海の言葉に聞く耳も持たないヴィヴィは、その股間から顔を下げると、兄の太ももの上に頬を預けた。
「ヴィヴィね、これからはずう~っとお兄ちゃんの傍にいるね」
「……え……?」
「スケートも東大受験も辞めて、ずっとお兄ちゃんの傍にいるから。だからもう、寂しくないよ?」
匠海の太ももの上でうっとりと囁くヴィヴィの肩を、兄は両手で掴んで引き上げた。
「ヴィクトリア……? 何を言っている? 俺はそのままのお前を愛しているんだ。そんなこと、俺は望んでないよ」
ヴィヴィのとろんとした瞳を必死に覗き込みながら言い含めてくる兄に、ヴィヴィは微笑んだままふるふると首を振る。
「そんな事、言わなくていいの。ヴィヴィの寂しがり屋のお兄ちゃん――」
そう甘く囁いたヴィヴィは、付いていた膝を上げると、その小さな胸の中に兄の頭を抱き込んだ。
愛おしそうに匠海の頭を撫でてくるその手は、まるで幼子をあやす様な母性さえ感じさせるもので。
「……ヴィクトリア……?」
自分の腕の中で震えながらその名を呼ぶ匠海に、ヴィヴィはちゅっとその黒髪に口付ける。
「大丈夫。分かってるから。ヴィヴィはずうっとお兄ちゃんの傍にいるから。それがヴィヴィの幸せだから――」
だから、もう、何も言わなくていいの。
「好きだ」も「愛してる」も、人形のヴィヴィには必要ないの。
「可愛い」――それだけで愛でる言葉としては十分なの。
「ちがうっ!! 頼む、ヴィクトリア、正気に戻ってくれっ」
妹の抱擁を振り切ってそう叫ぶ匠海に、ヴィヴィは困ったように微笑む。