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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章          

 いつの間にか完全に日が暮れ、背後の海には闇が落ちていた。

 やっと夜が来た。

 ヴィヴィが待ち望んでいた夜が来た。

「お兄ちゃん? ……寒くなってきたね。中に入ろう? ね……、ヴィヴィの事、いっぱい可愛がって……?」

「……おい……?」

 兄が訝しげに発したその目の前で、ヴィヴィは恥ずかしそうに2段ティアードのナイトウェアの裾をゆっくりと捲り上げた。

 そこから覗くのは、細く真っ直ぐ伸びた太ももと、その先のふっくらとした白い恥丘、金色に鈍く輝く薄い恥毛。

「いっぱい中に出していいよ? ヴィヴィ、お兄ちゃんならいくらでも受け止める。朝までずっと抱いて?」

 ヴィヴィのその必死の誘惑に、匠海は何故か激高するように叫んだ。

「ヴィクトリア……っ 頼むっ! 聞いてくれっ!!」

 兄の大きな声に、ヴィヴィの華奢な両肩がびくりと震え上がり、小さな顔には怯えた表情が浮かぶ。

「お兄ちゃん……、どうしたの? ヴィヴィ、怖いお兄ちゃん、ちょっと苦手……。お願い、優しくして?」

「ヴィクトリア……?」

 妹のあまりの感情の起伏の激しさに、匠海は戸惑った様にただただヴィヴィを見つめてくる。

 ヴィヴィはたくし上げていた裾をきゅっと両手で掴むと、心細そうに小声で囁く。

 背後に広がるもう真っ暗な海からの波の音と、ヴィヴィの声が、まるで共鳴するようにその場に落ちる。

「本当は痛いのも、ちょっと怖いの……。でも、お兄ちゃんがくれるものだったら、ヴィヴィ、我慢する。だってヴィヴィはお兄ちゃんのものだもの――人形、だもの」

「………………」

 妹のその告白に絶句した匠海は、口を開いたまま呆然とヴィヴィを見つめていた。

「ヴィヴィ。嬉しかった。お兄ちゃんが昨日、『俺の可愛いくてエッチな“お人形さん”――ずっと大切にするから』って言ってくれて」

 昨夜の兄の言葉を思い出し、ヴィヴィの人形の部分が喜びに打ち震える。

 あれはとても素晴らしい言葉だった。

 ――ずっと大切にするから。

 うん、人形にとっては、何よりも掛け替えの無い大切な言葉だった。

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