この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
いつの間にか完全に日が暮れ、背後の海には闇が落ちていた。
やっと夜が来た。
ヴィヴィが待ち望んでいた夜が来た。
「お兄ちゃん? ……寒くなってきたね。中に入ろう? ね……、ヴィヴィの事、いっぱい可愛がって……?」
「……おい……?」
兄が訝しげに発したその目の前で、ヴィヴィは恥ずかしそうに2段ティアードのナイトウェアの裾をゆっくりと捲り上げた。
そこから覗くのは、細く真っ直ぐ伸びた太ももと、その先のふっくらとした白い恥丘、金色に鈍く輝く薄い恥毛。
「いっぱい中に出していいよ? ヴィヴィ、お兄ちゃんならいくらでも受け止める。朝までずっと抱いて?」
ヴィヴィのその必死の誘惑に、匠海は何故か激高するように叫んだ。
「ヴィクトリア……っ 頼むっ! 聞いてくれっ!!」
兄の大きな声に、ヴィヴィの華奢な両肩がびくりと震え上がり、小さな顔には怯えた表情が浮かぶ。
「お兄ちゃん……、どうしたの? ヴィヴィ、怖いお兄ちゃん、ちょっと苦手……。お願い、優しくして?」
「ヴィクトリア……?」
妹のあまりの感情の起伏の激しさに、匠海は戸惑った様にただただヴィヴィを見つめてくる。
ヴィヴィはたくし上げていた裾をきゅっと両手で掴むと、心細そうに小声で囁く。
背後に広がるもう真っ暗な海からの波の音と、ヴィヴィの声が、まるで共鳴するようにその場に落ちる。
「本当は痛いのも、ちょっと怖いの……。でも、お兄ちゃんがくれるものだったら、ヴィヴィ、我慢する。だってヴィヴィはお兄ちゃんのものだもの――人形、だもの」
「………………」
妹のその告白に絶句した匠海は、口を開いたまま呆然とヴィヴィを見つめていた。
「ヴィヴィ。嬉しかった。お兄ちゃんが昨日、『俺の可愛いくてエッチな“お人形さん”――ずっと大切にするから』って言ってくれて」
昨夜の兄の言葉を思い出し、ヴィヴィの人形の部分が喜びに打ち震える。
あれはとても素晴らしい言葉だった。
――ずっと大切にするから。
うん、人形にとっては、何よりも掛け替えの無い大切な言葉だった。