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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第93章
2人が口を噤み、暗がりのウッドデッキに響くのは、静か過ぎるほどの波の音。
その静寂を破ったのは、兄だった。
「頼む、ヴィクトリア……。頼むから、説明するから、聞いてくれ」
そう静かな声で諭しながら、匠海が一歩ヴィヴィに近付いた。
もしかしたらそれは、ソファーに座って話を聞いて欲しい、ただそれだけを伝えるための行動だったのかもしれない。
ただヴィヴィは過敏に反応した。
「いやぁ……っ 来ないでっ 近づかないで……っ」
そう泣きそうな声で懇願しながら後ずさったヴィヴィは、ウッドデッキの隅の塀にまで逃げ、その場にへなへなとしゃがみ込んだ。
「ダッド、マム……、クリス……っ 助けて……っ」
そうぶつぶつ呟きながら震える両手で耳を塞いだヴィヴィを、匠海はただ茫然と見つめていた。