この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第94章            

 逆にクリスだったら、居た堪れなくて会いたくない。

 自分の我が儘で、一方的に大切な約束を反古した自分は、双子の兄に合わせる顔が無い。

 理由を求められても、説明出来ないし。

 でも、父なら――。

 子煩悩で自分に心底甘い父になら、会ってもいい。

 英国で倒れて入院した娘に「スケートをするのが苦痛になったのなら、辞めればいい」と言ってくれた父。

 最低だとは分かっているが、今はその言葉に縋り付きたい――甘えたかった。

「…………いい、よ」

 小さな声でそう返事したヴィヴィに、朝比奈は頷く。

「畏まりました。どうぞお着替えになって、ソファーでお待ちになっていて下さい」

 そう言い置いてリビングを後にした朝比奈に、ヴィヴィはウォーキングクローゼットへ入ると、白いバスローブを脱いだ。

 五分袖の白シャツの上から、胸上と腰に大きなボタンの付いたジャンパースカートを纏うと、クローゼットから出た。

 




「やあ、おはよう、ヴィヴィ! ほうら、餌付けに来たぞ~っ」

 開口一番嬉しそうにそう言いながら入ってきた父に、ヴィヴィは呆気に取られる。

「…………へ?」

(え、餌付け……?)

 不思議そうに首を傾げた娘の前のテーブルに、父がサンドウィッチの乗った皿を置いた。

「ほら、食べなさい。お前、昨日のランチ以降、何も口にしていないんだって?」

 隣に腰かけた父が、卵サンドを摘まみ、ヴィヴィの薄い唇の前に持って行く。

 けれど娘は小さく首を振って口を開いた。

「…………食欲ない、の」

「え~~。雛に餌を与えるのは、親鳥の特権じゃないか~」

 父が眉をハの字にしてそう拗ねる。

 いつの間に自分達は鳥になったんだ……と心の中で突っ込みながら、ヴィヴィは小さく嘆息した。

「ヴィヴィ?」

「………………」

 父は隣でしょぼくれた顔をした娘を見て、苦笑する。

「ふっ なんて顔して。まあ、それも可愛いけれど」

 匠海に似た大きな掌で頭を撫でなでされるその下で、ヴィヴィはさらにしょぼんとする。

「……可愛くないもん」

/2774ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ