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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第94章
数分後、ようやくしっかりとしたヴィヴィは、父に感謝を述べた。
「ダッド……。来てくれて、ありがとう……」
恥ずかしそうにそう微笑んだヴィヴィに、父はまた がばと抱き着く。
「やっぱり可愛いなあ~♡ ヴィヴィ、一緒に会社行かない?」
「え、遠慮しておきます……」
そう呆れた声を上げた娘に、父は苦笑すると抱擁を解いた。
「あと、東大受験も自由にしていいけれど、クリスとはちゃんと話し合いの場を持ってあげなさい」
「はい……」
父のその最後の言葉には、ヴィヴィは心底納得して頷いた。
クリスと向き合わねば。
本当の理由は話せないが、今の自分は集中して勉強に打ち込める精神状態で無い事は、クリスに説明出来るから。
怒るだろうか。
理解してくれるだろうか。
それは、ヴィヴィにも分からなかった。
両親も兄2人もいない、平日の昼間の屋敷。
ダッドが会社に行き、することもないヴィヴィはリビングでぼへ~と腑抜けていた。
父に言われた事を考えなければならないのに、脳みそが「働きたくないです」とストライキを起こして言う事を聞いてくれない。
「ぁあ~~……っ 暇っ」
だらしなくソファーに凭れながら、1人でそう呟いても誰の返事も無く。
いや、朝比奈が傍に居てくれていたのに、下がらせたのは自分なのだが。
「………………」
ヴィヴィはまたしばらくその場に佇んでいたが、やがてゆっくりと腰を上げた。
3階から1階へと石造りの階段を降りると、向かったのはライブラリー。
ここのところずっと分刻みのスケジュールで、ヴィヴィはこの部屋に足を向ける時間さえなかった。
だだっ広いその部屋の隅には天井まで続く書棚、本を読むためのソファーセット、テーブルセット、大画面テレビを見るためのソファーセットがあるだけの、がらんとした空間。
ヴィヴィはテレビの前のソファーにごろんと寝転がると、テレビのリモコンを掴み電源を入れた。
昼前のその時間、やっていたのは情報番組に海外ドラマだった。