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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第94章            

 ヴィヴィは情報番組の1つをつけると、流し見していた。

 台風情報に、殺人事件の報道、暮らしに役立つ豆知識、アイドルグループの1人に彼氏がいて脱退か? 等、いつものヴィヴィなら殆ど目にしないテレビには、知らない事が沢山溢れていた。

 正直、芸能情報に出てくる俳優、アイドル、著名人の半分以上をヴィヴィは知らなかった。

 次第につまらなくなって、DVDでも見ようかとソファーから立ち上がったヴィヴィは、テレビから聞こえてきた自分の声にびくりと反応した。

『君の頑張り……、知ってるよ』

 そのヴィヴィの声と共に画面に映るのは、リンクで練習中のクリス。

『君の苦悩……、知ってるよ』

『君の戸惑い……、知ってるよ』

『でも、君は頑張り屋さんで、何でも1人で解決しようとしちゃうから……。だから――』

 ロッカールームで落ち込んでいるクリスの傍に駆け寄るヴィヴィは、ぱっとその手にお菓子の箱を握らせる。

「これっ あげるっ!!」

「……え……?」

 目をぱちくりと見開き、ヴィヴィを見上げるクリス。

「きゃ~~っ!!」

 小さな可愛らしい声で、叫びながら走って逃げて行くヴィヴィ。

 そして最後は、

『君を蕩かし、解してくれる、甘~い口溶け! Derrite 新発売!』 

 笑顔のヴィヴィがそう悪戯っぽく宣伝している、CMだった。

 ヴィヴィはリモコンを手に取ると、テレビの電源をオフにした。

 それはスポンサーの1つである、菓子メーカー・grucoのもの。

 春休みにまとめて撮ったそれは、確か2パターンある筈だ。

「………………」

(これ、どうするんだろう……)

 立ったままだったヴィヴィは眉根を寄せると、ソファーにぽすりと座り込む。

(NHK杯と中国杯をドタキャンして、イメージダウンした自分が出てるCMなんて、きっと使えないよね……)

 自分が謝罪に行かなければならない企業は何社あるのだろうと、ヴィヴィは指折り数えてみる。

 そしてそれが軽く両手の指の数を超えることに気付いたヴィヴィは、もう数えるのを止めた。

 謝罪しても許してくれないだろうし。

 もしかしたら契約不履行で訴訟問題に発展したり、違約金が請求されたりするかもしれないし。

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