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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第19章
「皆様、デザートをご用意いたしました。お好きなものをどうぞお召し上がりください」
家令の言葉を聞き、双子をからかっていた友人達は各々デザートを取りにソファーを離れていった。
「「…………」」
ぽつんと残された二人は、顔を見合わせて無言で黙り込んだ。
管弦楽の麗しい音色が辺りに響き、楽しいデザートタイムが目の前で繰り広げられている。
「お前たちはケーキ食べないのか?」
いつの間にか傍に来ていた匠海にそう声を掛けられ、双子は同時に振り向いた。
「食べるけれど……」
「……今、むくれております」
二人で一つの文を作って答えた双子に、匠海が破顔する。
「あはは、何言ってんだか」
「っていうのは冗談で。明後日からロシアへ行くから、太らないようにしないと……」
とヴィヴィが肩を竦める。
2日前――ヴィヴィは匠海の前で自作のFS『サロメ』を披露した。
そして昨日、ジュリアンはじめコーチ陣の前で決死のFSを滑って見せた。
「どうしてもやりたいプログラムがあるから、見てください」
そう言って心を籠めて滑って見せたヴィヴィが演技を終え、コーチ陣のいるフェンス傍へと戻る。
「まったく……いつの間にこんなものを用意していたのよ――?」
と心底呆れた顔のジュリアン。
「曲の編集や振付まで……かなり前から準備していたんじゃないのか?」
サブコーチのその言葉に、ヴィヴィは頷く。
「三月半ば位から……。どうしてもサロメをやりたかったんです」
体の脇でギュッと両手を握りしめたヴィヴィを、三田ディレクターがカメラ越しに見つめていた。
ヴィヴィがプログラムを作る過程を見守ってくれた彼女の視線に勇気づけられるように、口を開く。
「今までの自分だったらサロメを演じきれないと思ったから、大人っぽく演じられるようにベリーダンスも習いました」
「でしょうね……見るからにベリーダンスの動きが多用されているのがよく分かったわ……」
ジュリアンの返事に、サブコーチも頷く。
「関節の可動域が広がったような気がするが、それもベリーダンスのおかげなんだな?」
「だと思います」
サブコーチの指摘に、ヴィヴィはそう肯定した。
「………………」