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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第94章            

 1人取り残されたヴィヴィは、クリスが出て行った扉を、苛立ちと困惑とをごちゃ混ぜにした感情と共に睨んでいた。

(な、何なの……? 何でクリスにこんな事されなきゃならないの!? 受験勉強の事ならともかく、スケートの事までとやかく口を出される覚えないっ)

 ヴィヴィはそう心の中で反発すると、「ふんっ」と不貞腐れてソファーの上に座り直した。

 クリスが言った「それ」とは、朝比奈に用意させたスケートのウェアが入ったバッグ。

 けれどヴィヴィは言われるがまま着替える気など更々無く、白シャツにショーツ、グレーのハイソックスという情けない恰好のまま、そこで膨れていた。

 けれど、それが許されたのも1分位のことで――、

「ヴィヴィ、着替えられたよね。入るよ?」

 扉の外から聞こえてきたのは、自分をこんな状態にして放置したクリスの声。

「なっ!? だ、ダメっ 入って来ないで!」

 ヴィヴィは焦ってそう言い返す。

 さっきだって白いショーツを見られたのだ。

 さすがに兄妹とはいえ、そう何度も下着姿を見られたくなどない。

「何、まだ着替えてないの? どっちにしろその恰好じゃ、屋敷に帰る事すら出来ないよ?」

「……っ クリスがそうしたんでしょうがっ!!」

 クリスのあまりの言い様に、ヴィヴィは我慢ならずに牙を剥いた。

「じゃあ、100数える前に着替え終わってね。100、99、98、97……」

「やっ やだってばっ! ヴィヴィ、着替えないもんっ」

 ヴィヴィはそう反抗すると、ガキっぽく両の拳をソファーの上にボスボス叩きつける。

「あ、そう。じゃあ、50秒後に開けるからね? 50、49、48……」

 100秒どころか50秒と猶予時間を削ってきたクリスに、ヴィヴィはソファーから立ち上がると、抜き足差し足ドアへと近寄る。

(ふんだ。鍵閉めて、ここで籠城してやるっ)

「あ、ちなみに知ってる……? この部屋のマスターキー、警備員室に行けば、借りれるんだからね……?」

「……~~っ!?」

 双子の妹の思考回路など全てお見通し――とばかりのクリスのその指摘に、ヴィヴィはびくりとして足を止めた。

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