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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第95章       

「ま、いいよ。昨日と今日勉強してないだけだし……。あと数日悩んでも、リカバリーは出来る……」

 黙り込んでしまったヴィヴィに、クリスはそう冷静に判断し、伝えてくる。

「うん……」

「ただ……」

 そこで言葉を区切って自分を見下ろしてくるクリスを、ヴィヴィは不思議そうに見上げる。

「ん……?」

「前に言った通り、僕はヴィヴィと、東大に通いたいんだ……」

 その真っ直ぐな眼差しに、ヴィヴィはスケート靴を隣に置くと、クリスの腰に両腕を回してきゅっと抱き着いた。

「うん、分かってる……。ヴィヴィも、そうしたいの……」

 1年前の七夕のあの日――、「どうしても双子で東大に行きたい」とクリスがらしくない我が儘を言った時、ヴィヴィは確かに了承した。

 そして「将来外交官になりたい」――そのまだ漠然とした夢を叶えるのにも、東大が一番適切な進学先であることも分かり、匠海とこんな事になる前までは、ヴィヴィは一心不乱に受験勉強をしてきた。

 けれど――、

「何をそんなに、悩んでるの……?」

「………………」

 自分の腰に纏わりつく妹を優しく撫でながら、クリスは心配そうにそう声を掛けてくれたが、ヴィヴィは口を噤む事しか出来なくて。

「まあ、言えるようになったら、言って……?」

 ヴィヴィが全てのものに背を向けてしまったのは、匠海と葉山に行ったその日から。

 クリスはその事に確実に気づいていて、そして長兄と妹の不実な関係も知っている。 

 本当は誰よりも一番気になって仕方ないだろうに、そう譲歩してくれたクリスに、ヴィヴィは心の底から謝った。

「……クリス……。ごめんなさい……」





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