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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第95章
物心付いた頃から、両親よりもずっと傍に居て支え続けてくれた朝比奈は、双子の事を本当によく理解してくれていた。
けれど、今日は甘やかし過ぎている……そう分かっていながら、ヴィヴィは朝比奈の胸に縋って泣き続けた。
「試合が近くなければ、本当はもう少しゆっくりして頂きたい、もう少しじっくりと自分に向き合う時間を持って頂きたい……。そう思っている自分もいたのですよ」
ようやく泣き止み始めたヴィヴィにそう本音を漏らした朝比奈は、宥める様にぽんぽんとそのバスローブの背中を撫でた。
「……ゆっくりは、出来ないけど……。自分に向き合うのは、やる……。時間、掛かるだろうけれど……」
泣き腫らした目で朝比奈の顔を見上げながら、そうぼそぼそ呟いたヴィヴィに、朝比奈は笑みを深くして頷いた。
「ええ。ぜひ、そうして下さい。苦しい時や辛い時、こうして傍に居て差し上げることくらいは、私にも出来ますから」
「……うん。ありがとう……」
朝比奈の優しい言葉に救われながら、ヴィヴィは最後にぎゅっと抱き着いて身体を離した。
泣き濡れた小さな顔をハンカチで拭ってくれた朝比奈が、
「さ、寝ましょうか」
と就寝を促したが、ヴィヴィはふるふると頭を振った。
「ううん。一緒にこれ、片付ける」
そう言ってメダルの箱から中身を取り出し始めたヴィヴィに、朝比奈は頷いた。
「ふふ。ではお願い致します」
その後、ヴィヴィも忘れ掛けていた、幼い頃の恥ずかしい思い出を朝比奈の口から聞かされながら、キャビネットの中身を直し終えた2人は、満足そうにその全容を眺めていた。
「ヴィヴィ、これから何があっても、絶対にスケートだけは続ける……」
それは誓いだった。
これから例えスランプに陥っても、怪我をしても、アマチュアスケーターとして選手生命を絶たれたとしても。
それでもスケートは続けられる。
大人になっても、年齢を重ねても、それこそお婆ちゃんになっても。
ずっと、ずっと、自分はスケートを滑り続ける。
「ええ。私はお2人のファン第1号ですからね。いつまでもお2人の滑りを見続けていたいです」
朝比奈のその言葉に、ヴィヴィは不思議そうに首を傾げた。