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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第95章
大学の方もヴィヴィに来て欲しいと言っているくらいなのだから、コーチの目処はついているのだろうし。
そして何より、中京大学とその付属高校は、ヴィヴィの尊敬する浅田真緒の出身校だ。
ヴィヴィは目の前のPCで、路線を確認する。
中京大学のリンクがある豊田キャンパスの最寄駅から、ここ松濤まで、新幹線等を使って片道約3時間。
ぎりぎり日帰りでも通える距離だ。
土日どちらかにヴィヴィが上京してジュリアンに師事すれば、とりあえず今シーズンはいけるだろう。
ヴィヴィはそう目算を立てると、早速中京大学の付属高校について調べようと、PCのキーボードに細い指先を走らせた。
9月29日(火)。
朝練に参加したヴィヴィにほっとした周囲だったが、BSTへ登校しようとするその姿を見て、皆が一様に呆気に取られた。
「ヴィ、ヴィヴィ……?」
ジュリアンが目をぱちくりとさせ、娘にそう声を掛ける。
「……何、ですか?」
呼ばれたヴィヴィは、母の方に向き直り、そう敬語で聞き直す。
「何って……」
そう呟いて口籠った母と、そして周りのチームスタッフに、ヴィヴィはぺこりとお辞儀した。
「用が無いなら、行きます。行こう、クリス」
「……うん……」
そう妹に促され、何か言いたげなクリスは、ヴィヴィの後を着いてリンクを出て行った。
「い、行ってらっしゃい……」
「気を、つけて、な……」
そう双子の背中に掛けられた挨拶は、どれもこれもが狐に包まれたかのようなそれだった。
双子を乗せたベンツがBSTに到着し、校門傍で車を降りてすぐ、辺りがざわつき始めた。
「え……? あれ、ヴィクトリア先輩……?」
「だよね……? ど、どうしちゃったんだろ……」
いつも通り折り目正しいクリスの隣、そのコンパスの差を埋める為ひょこひょこ脚を動かすヴィヴィの姿は、いつものそれからは程遠かった。
第2ボタンまで外された白シャツに、だいぶ緩く締めたネクタイ、そして膝上20cm以上の短いスカートの腰には、学校指定の紺色のニットが巻かれている――ウェストを折っている事を、隠すために。
そして「ひじきかっ!?」と突っ込まれそうなほどごってり塗り込まれたマスカラと、色つきのグロスをべっとり塗った唇。