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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第95章
BSTでの勉強とダンスの練習を終えたヴィヴィは、ディナーまで勉強するというクリスと別れた。
そしてピアノとヴァイオリンの練習を済ますと、一足先にリンクへと向かった。
メインリンクへとひょっこり姿を現したヴィヴィに、年下のリンクメイト達が「スケート辞めないよね?」「ヴィヴィちゃん、辞めちゃ、やっ!」とわらわら集まって来た。
その一人ひとりに「もう大丈夫」「心配かけて、ごめんね?」と謝り、心からのお礼を言ったヴィヴィは、その視線の先に母を見つけた。
「あら、ヴィヴィ。もう来たの?」
双子はいつもディナーを食べてからレッスンに来るので、まだ早い時間にリンクにいる娘に驚いたらしい。
ジュリアンのその言葉に、ヴィヴィは頷く。
「はい。コーチにお話があって、早めに来ました」
「話……? そう、じゃあ第2ミーティングルームで待ってて。後ちょっとで終わるから」
ジュリアンの指示に、ヴィヴィは素直に頷くと、リンクメイト達に別れを告げてリンクから出た。
その10分後――。
「何、馬鹿なこと言ってんのよっ! そんな事、認められる訳ないでしょう――っ!?」
ヴィヴィが揃えてきた中京大学付属高校の資料を、手の中でくしゃりと握りつぶしたジュリアンは、英語でそう喚く。
その声は廊下へと漏れ聞えるほど大きく、如何に母が腹を立てているかが伝わってくる。
「どうしてですか?」
冷静そうに母を見つめているヴィヴィだが、その腹の中は煮えくり返っていた。
(なんで分かってくれないのっ この石頭っ!)
「今すぐ、中京大学付属高校に転校したい」とジュリアンに懇願したヴィヴィだったが、その結果、今、頭ごなしに怒られているのだ。
「確かに中京はリンクも学生寮もあるけれど、あんたは私に師事したいんでしょう?」
「はい。でも――」
母のその言葉に、ヴィヴィは再度説得を試みようとしたが、その声にジュリアンの言葉が被せられる。
「片道3時間も掛けてここに通うのならば、何の為に中京に転校する必要があるのよっ?」
先程から何度も繰り返されるその質問に、ヴィヴィも毎度も同じ答えを返すのみで。
「……家を、出たいんです」