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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第95章       

「悪いのは全て自分だって。今回の喧嘩の責任は、一方的に自分に非があるって……」

 母のその言葉にも、ヴィヴィは苦虫を噛み潰した様に、可愛らしい顔を歪めるだけだった。

(……っ 何言ってんの。偽善者っ 自分ばっかりいい子ぶって……っ 結局はそうやって、じわじわとヴィヴィを追い込むんじゃないっ)

「匠海と何があったか知らないけれど、どうせ家を出たいのも、匠海との喧嘩のせいでしょう? まったく……。もうすぐ大学生だっていうのに、どんだけガキなのよ……。物事を一側面からしか見れないのは、ヴィヴィ――あんたの欠点よ」

「―――っ」

 まるで一方的にヴィヴィが悪いと決め付けている様にも聞こえる母の言葉に、さすがにヴィヴィももう我慢ならず、ソファーから立ち上がってミーティングルームから飛び出した。

(いっつもそうだっ 皆、お兄ちゃん > ヴィヴィ で、評価するっ お兄ちゃんばっかりが正解で、お兄ちゃんの肩ばかり持つんだっ!)

 そうぷりぷり怒りながら廊下を歩くヴィヴィの脚は、警備員室の奥へと向かう。

 裏口から出たそこは人気がなく、小さな頃からのヴィヴィ逃げ場だった。

 双子が小さな頃からリンクではスパルタだった母に、ヴィヴィはよく泣き叫んでここへと隠れていたのだ。

 ヴィヴィは建物の外壁に背を預けると、ずるずるとその足元へとしゃがみこんだ。

「……っ なんでっ なんで、ヴィヴィばっかりが、辛い思い、しなきゃいけないのっ!?」

 それはヴィヴィの、今の状況を表す本音だった。

 多分両親もクリスも、匠海とヴィヴィが喧嘩をしたと知った時、「あ~、全面的にヴィヴィが悪いんだろうな」と直感的に思った筈だ。

 確かに始まりは自分のせいだ。

 それは認める。

 勝手に実の兄の匠海に恋し、勝手に盛り上がり、勝手に追い詰められ、自分勝手に兄の心と躰を貪った。

 そこまでは自分1人の責任だと、ヴィヴィだって認めている。

 けれど、その後はどうだ?

 『復讐』と言いながら、次にヴィヴィを抱いたのは匠海だし。

 フランスの試合後、自分の部屋にヴィヴィを誘ったのも匠海だ。

 その後も、兄は妹である自分との近親相姦を止める事はせず、反対にその関係性に溺れて興奮していたではないか。

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