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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第95章       

(お兄ちゃんだって、責められるべきなんじゃないの……っ!?

 お兄ちゃんだって、少しは悩んだり、苦しんだりすべきなんじゃないの……っ?

 なんで、なんで、ヴィヴィばっかり――っ!!)

 ヴィヴィの小さな頭の中は、そういった怒りや憤慨で爆発しそうだった。

 避妊の事だってそうだ。

 いつもヴィヴィばかりがピルを飲んで避妊に気を遣い、心を痛めていたのに、兄は何もしなかった。

(――っ もし、ヴィヴィが妊娠なんかしてたら、お兄ちゃん、どうするつもりだったんだろうっ!? どうせ、自分は何も知らない、何も関係ないって知らんぷりしたんだろうな。で、周りの皆もヴィヴィばっかり非難して、ヴィヴィばっかり問い詰められて「父親は誰なんだっ!?」「高校生で妊娠なんて、この恥知らずがっ!」って怒られて!!)

 ヴィヴィは自分の思考がかなり飛躍していることにも気付かず、そのまま怒りをエスカレートして行き、極限状態までになった。

「……~~っ だぁあああっい、きらいっっっ!!!!」

 そう大声で喚いたヴィヴィは、ぜいぜいと息を切らした。

 もう兄のことなんて、本当に大っ嫌いだ。

 顔も見たくない。

 声も聴きたくない。

 そんなヴィヴィの頭の中をちらりと「今日、外泊しようかな?」という甘い考えがよぎったが、じゃあ実際誰の家に泊めてもらうか? と考えた時、浮かんだのはクラスメイトの女子だった。

(皆、受験生だし……。それに何日も、泊めて貰えないだろうし……)

 それに、朝練と夜練をするヴィヴィは、朝5時に起きて夜11時に帰宅するから、相手にも迷惑を掛けてしまう。

「……~~っ」

 そう真面目にスケートの心配をしてしまったヴィヴィは、その場で文字通り地団太を踏んだ。

 母の前であんなことを言いはしたが、ヴィヴィはスケートを辞めたくない。

 というか、やめる気なんて更々無い。

 続けたい、今よりももっと上手く滑れるようになりたい。

 第一、辞めると決意した理由だって、本当に辞めたかったからじゃない。

 スケートが嫌いになったからじゃない。

 兄の為に、兄の傍にいるにはそうするしかないと思ったから、辞める決心をしたのだ。
 
 自分がスケートを嫌いになる理由など、これっぽっちも無いのにも関わらず。

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