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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第95章       

「…………はぁ……」

 ヴィヴィの薄い唇から洩れるのは溜め息ばかり。

 母に怒られ、父にも厳しい事を言われ……。

 いつもこういう状況の時、ヴィヴィが真っ先に甘えていたのは匠海だった。

 兄はいつも取り敢えずヴィヴィを甘やかして、泣いているのを宥めて。

 そして散々喚かせて落ち着かせてから、一緒に自分が悪かった点を導き出し、考え直させてくれた。

 ――その事実にまで、腹立たしくなる。

「どうせっ! ヴィヴィ、馬鹿だもんっ! 阿呆だもんっ!! ガキだもんっ!!! どうせ、ヴィヴィがすべて悪いんでしょっ もう、皆、大っ嫌いだ~~っ!!!!」

 建物の裏側とはいえ、一応ここは東京のど真ん中――渋谷駅の裏側だったりする。

 ヴィヴィは都会の喧騒に紛れるように英語でそう捲し立てると、最後に「ふんっ」と大きく鼻を鳴らし。

 そして裏口から建物内へと入ると、すごすごとリンクへの道を戻り始めた。

 その後ろ姿を、長年の付き合いの警備員のおじさんが、

「やれやれ。今回は一段と、長かったな~」

と苦笑しながら見送っていたことを、ヴィヴィは全く気付いていないのであった。







 その日の夜の練習を予定通り熟したヴィヴィを、屋敷へと帰る間際、ジュリアンがしたり顔で見つめて来た。

「……~~っ ふんだっ!!」

 そうガキ丸出しの捨て台詞(?)を残し、脱兎の如く逃げて行く娘に、ジュリアンは憤慨する。

「一体全体、誰に似たのかしらっ もうっ!!」

 娘のおバカ加減をそう詰ったジュリアンに、そこに居た一同が「「「いや、確実に貴女に似たんでしょ……」」」と胸の中で突っ込んだのだった。

 そして屋敷へと戻るベンツの中では、

「『ふんだっ!!』て……、可愛い……」

 何故か妹の捨て台詞に萌えたクリスが、ヴィヴィの頭をよしよしと撫でていたのだった。

 結局なんやかんやと周りに甘やかされているのに、当の本人はまだ「ヴィヴィばっかり悪者扱いっ ぷんすかっ」と拗ねていた。

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